イントロダクション
タイトル | : | イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン なぜ、わずか7年で奇跡の対話型AIを開発できたのか |
発行日 | : | 2024年7月30日 第1刷発行 |
発行所 | : | 朝日新聞出版 |
著者 | : | 小林雅一 |
著者情報は、上記リンクからご確認ください。 |
OpenAIで起きたサム・アルトマン解任劇。
このとき、従業員の9割がサム・アルトマンの復帰を求めたそうです。
その理由とは、何だったのでしょうか?
サム・アルトマンの人物像に迫り、そのカリスマの秘訣がわかるかも?
そう思い、本書を手にすることにしました。
オススメしたい人
- 生成AIブームの火付け役、サム・アルトマンについて知りたい人
- サム・アルトマンCEO解任劇の舞台裏、その後を知りたい人
- OpenAI、Microsoft、Google…等のAI開発の覇権争いの様子を知りたい人
- AI研究の歴史を知りたい人
学べること
本書では、サム・アルトマンという人物を中心にAIの進化の歴史や現状、AI開発における覇権争いについて学ぶことができます。
ここでは、本書で紹介されるサム・アルトマンという人物とサム・アルトマン解任劇の舞台裏に焦点を当てて私の解釈で簡単にまとめています。
サム・アルトマンの人物像
1985年4月、サム・アルトマンはイリノイ州シカゴのユダヤ系家庭に4人兄弟の長男として生まれました。
父親は、弁護士資格を持つ不動産ブローカー、母親は皮膚科医であり、経済的に恵まれた家庭で、両親から豊かな愛情を注がれるとともに将来成功するための強い自信を叩きこまれて成長しました。
8歳の誕生日に母親からプレゼントされたAppleのマッキントッシュ(MacLCⅡ)を使い、パソコンの操作方法や内部構造を熟知していきました。
スターウォーズのようなSFにも夢中で「コンピュータはいつの日か自分で考えるようになるだろう」と直感したそうです。
2003年、サム・アルトマンは、スタンフォード大学に入学し、コンピュータ科学を専攻。
AI関連の講義をいくつも受講しました。
しかし、当時は「AIの冬」と呼ばれるAIの低迷期でした。
そのため、サム・アルトマンは、次のように思いました。
2005年、サム・アルトマンは、インターネット・ブームに乗って一旗揚げたいと思いました。
そして、大学2年生19歳で大学を中退。
Loopt(ループト)というスタートアップ企業を立ち上げ、そのCEO(最高経営責任者)に就任しました。
この起業に際して「シード・アクセラレータ(seed accelerator)」と呼ばれるスタートアップ育成団体である「Yコンビネータ」から支援を受けました。
2012年、サム・アルトマンは会社を約4300万ドル(約34億円)で売却。
個人的に500万ドル(約4億円)を手に入れました。
このお金でサム・アルトマンは長期旅行を楽しみ、残りのお金で自分のベンチャー・キャピタル(VC)「Hydrazine Capital」を立ち上げました。
2014年、28歳となったサム・アルトマンは縁があって「Yコンビネータ」の社長に就任。
数々の著名起業家・投資家らと緊密なコネクションを築きました。
また、自分のVCやスタートアップ投資などから巨万の富を得ました。
非営利研究団体「OpenAI」設立
2015年、サム・アルトマンは自身のキャリアを振り返り次の結論に至りました。
※AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)
サム・アルトマンは、AGIの実現のために最初にイーロン・マスクを誘うことにしました。
2人は「人類に貢献する安全なAGI」を実現するためにプロジェクトを立ち上げることで合意しました。
そこにグレッグ・ブロックマン、アンドレ・カーパシーが合流。
このプロジェクトは、「非営利の研究団体」となり「OpenAI」と命名されました。
その後、イリア・スツケヴァーが合流し、OpenAIは25名程度で発足しました。
「AGIて何?」問題
このようにして、超優秀な人材を集めて創業したOpenAIですが、大きな問題がありました。
「AGIて何?」問題です。
それもそのはず、AGIの厳密な定義は当時から現在に至るまで存在していないのです。
目指す方向が定まらず、朝から晩まで各自で好きな研究に取り組んでいました。
そして、設立から1、2年の間、OpenAIは目立った成果を出すことができませんでした。
イーロン・マスクは、そんなOpenAIの仕事ぶりに不満を募らせ始めました。
言語モデルの壁を突破する技術:トランスフォーマー
2016年、アレック・ラドフォードという若手研究者がOpenAIに入所しました。
人間の言葉を理解し文章を書いたりできる「言語モデル」の研究開発をしていたラドフォードは、OpenAIに入ってからもそれを続けることにしました。
しかし、当時の言語モデルでは支離滅裂な文章しか出力することができませんでした。
言語モデルの最大の問題は、「文脈の違いを踏まえて正しく言葉の意味を捉えることができない」ということでした。
どういうことかというと、次の2つの文章で使われる「アップル」の意味を正しく理解できないのです。
- オレンジとアップルを買ってください。
- アップルは新しいアイフォーンを発表した。
2017年、Googleで1つの論文が発表されました。
この論文では、「トランスフォーマー」と呼ばれる新しい技術が提唱されました。
このトランスフォーマーがうまく機能するかわからなかったGoogleは、この技術を他社に自由に使わせて様子を見ることにしました。
このとき、Googleはそれが何を意味するのかを理解できなかったのです。
このとき、Googleは様々な問題を抱えていたことから保守化傾向にありました。
そのため、先端技術を前に進めることができなかったそうです。
このトランスフォーマーは、言語モデルの壁を突破する仕組みを持っていました。
この重要性に気付いたのは、OpenAIのスツケヴァーでした。
スツケヴァーは、ラドフォードにトランスフォーマーの採用を即しました。
その結果、言語モデルの研究開発は大きな進展を成し遂げるのでした。
イーロン・マスクのOpenAI離脱
2017年、AGI実現のためには莫大な計算機資源の確保が必要であることがわかっていました。
そして、そのためには年間数十億ドル(数千億円)の資金が必要でした。
この資金確保は非営利団体として調達するのは極めて難しく、マスクやブロックマン、アルトマンらはOpenAIを営利企業化することで合意。
この際、マスクはOpenAIを自分の会社にすることを要求しました。
これに対し、アルトマンやブロックマンは難色を示します。
結果、マスクはOpenAIへの資金供給をストップしてしまいました。
2018年2月、マスクはOpenAIを去りました。
OpenAIが目立った成果を出せていなかったという背景もあるようです。
営利企業「OpenAI LP」を設立
2019年3月、アルトマンらは当初の非営利団体(OpenAI Inc.)を上部組織として維持しつつ、その下に営利企業(OpenAI LP)を設立。
アルトマンは、Yコンビネータの社長を辞任して営利企業「OpenAI.LP」の初代CEOに就任しました。
2018年7月、とあるビジネス会議でアルトマンはMicrosoftのサティア・ナデラCEOと偶然出くわしました。
アルトマンは、ナデラにAGIや大規模言語モデルなどOpenAIの事業内容を詳しく説明。
これまで、OpenAIが掲げるAGIというSFまがいの最終目標を真面目に受け取る大企業の経営者は一人もいませんでした。
しかし、ナデラはアルトマンらの夢を真剣に受け止め、出資についてMicrosoftとOpenAIの間で協議していくことで合意しました。
OpenAIの本社に戻ったアルトマンは、小躍りしながら次のように皆に伝えた。
MicrosoftとOpenAIの提携
2019年7月、MicrosoftはOpenAIに10億ドル(1000億円以上)を出資することで合意。
Microsoftとしても、AIの開発競争で大きくリードするGoogleに対抗する必要があったのです。
OpenAIは、他にも名だたるVCからも相当の資金の調達に成功。
これらの資金を使って、OpenAIは大規模言語モデルの開発を加速させました。
MicrosoftはOpenAIに対し20億ドルの追加出資を決定しました。
ただし、OpenAIは機械学習用のコンピューティング資源としてMicrosoftのクラウド「Azure」を使わなければならない条件が課せられました。
そして、MicrosoftがOpenAIに出資した総額30億ドルの大半はAzureの利用料として使われました。
つまり、Microsoftは、現金も株式も提供することなくOpenAIの株式や高度な技術力を手に入れたことになります。
このようにOpenAIは営利企業としての側面を強めていきました。
それは、「人類に貢献する安全なAGI」を実現するという理念に背く可能性があります。
その理念に賛同してOpenAIに参加した研究者は、アルトマンら経営陣に不信感を募らせました。
そのなかには、OpenAI共同創業者のダリオ・アモデイがいました。
ダリオ・アモデイは、2021年にOpenAIと袂を分かって「アンソロピック」を設立します。
ChatGPT爆誕
2022年11月30日、OpenAIはGPT-3.5をベースにしたChatGPTを一般公開しました。
GPTは、OpenAIの研究開発チームが開発した言語モデルです。
GPTとは、Generative Pre-trained Transformerの略です。
Pre-trained:事前学習
GPT-1は2018年6月に開発され、GPT-2、GPT-3…と開発されていきました。
2022年11月、GPT-4はかなりの程度まで開発されていましたが最終調整に時間がかかっていました。
本来の計画では、2023年初旬には「チャットボット」と組み合わせてユーザーに提供される予定でしたが、2022年11月の時点で未だゴールラインすら見えていない状態。
そのため、GPT-3を改良したGPT-3.5をチャットボットと組み合わせてリリースする代替案となりました。
また、GPT-3.5でリリースを急いだのは次の事情もありました。
- GPT-4は強力過ぎるため、それよりインパクトの小さいモデルで安全に世に広めたい。
(ただし、これは古いモデルに手を加える、つまらない仕事をさせられる技術者への建前) - アンソロピックより先に自分たちの新製品をリリースしたい。
従業員は、ChatGPTのリリースから1週間の利用者数は多くても10万人と予想していました。
しかし、実際にはリリースから5日目にして利用者数100万人に達する大ヒットとなりました。
それからのChatGPTブームは、ご存知のとおりです。
サム・アルトマン解任劇のはじまり
OpenAI社内では、AGIなど高度AIの開発方針について「警戒主義者(alarmist)」と「加速主義者(accelerationist)」という2つのグループに分かれていました。
ChatGPTの大ヒットは、この警戒主義者と加速主義者の間の亀裂を一層深めました。
アルトマンがAIの開発・普及に向けた環境を整えるため世界を回っている頃、OpenAI社内では不穏な空気が流れていました。
2023年3月に行われたGPT-4のリリース後も次々と新製品をリリースする経営陣の姿勢は、警戒主義者の目には「AIの安全性」を軽んじているように映りました。
アルトマンとブロックマンは、「中立派」を自認していました。
2023年11月17日、スツケヴァーをはじめ警戒主義者の幹部たちは、とうとう行動に出ました。
このときのOpenAI Inc.の取締役会は次の6名で構成されていました。
アルトマン排除に動いたメンバーを赤文字で示します。
【社内取締役】
- サム・アルトマン[OpenAI 共同創業者、CEO(最高経営責任者) ]
- グレッグ・ブロックマン[OpenAI 共同創業者、社長・取締役(会長)]
- イリア・スツケヴァー[OpenAI 共同創業者、チーフ・サイエンティスト]
【社外取締役】
- アダム・ディアンジェロ[米国のQ&Aサイト「Quora」の共同創業者・CEO]
- ヘレン・トナー[米ジョージタウン大学・研究者]
- ターシャ・マッコーリー[米シンクタンク「ランド研究所」非常勤研究員]
スツケヴァーら4人の取締役とのビデオ会議(取締役会)に臨んだアルトマンは、CEO・取締役の解任を言い渡されました。
アルトマンは、咄嗟に尋ねました。
アルトマンは、スツケヴァーから暫定CEOの支援を頼まれました。
ブロックマンは、この取締役会の動きに抗議して即日OpenAIを辞職しました。
しかし、このわずか4日後にはアルトマンとブロックマンは返り咲くことになります。
サム・アルトマン支持者の反撃
2023年11月18日、突然の解雇で気を落としたアルトマンはサンフランシスコのロシアン・ヒルにある自宅に帰宅しました。
この家にアルトマンがかつてYコンビネータ時代に育成した数々のスタートアップ企業の関係者ら20人以上が終結しました。
窮地に陥ったアルトマンを助けるのは、彼らの恩返しでした。
OpenAI取締役会への抗議活動を展開してアルトマン復職への支持を集めました。
また、OpenAIが空中分解してしまえば巨額投資が水の泡になってしまうベンチャー・キャピタルなどの大口投資家もアルトマンに味方しました。
Microsoftは、2023年の年明け早々に100億ドル(約1兆3000億円)の追加投資を行う予定でした。
ナデラCEOは、アルトマン解雇の知らせに驚愕し、そして激怒しました。
ナデラは、OpenAIの暫定CEOに就任するミラ・ムラティに直接電話で問いただしました。
しかし、サム・アルトマン解雇の理由を聞いても彼女は要領を得ない答えしかできませんでした。
ナデラはディアンジェロにも電話しましたが、モゴモゴ抽象的な事を言うばかり。
そして、OpenAIの従業員からも激しい抗議があり、取締役会は震えあがりました。
2023年11月19日、アルトマンは、取締役会に対しCEOと取締役への復帰を求めました。
アルトマンは、取締役会が投資家や従業員からの圧力に耐えられず了承されると考えていました、
しかし、取締役会はアルトマンの復帰を断固拒否し、最終的に物別れに終わりました。
この日、OpenAI取締役会は、エメット・シアを新たな暫定CEOにしました。
OpenAIの従業員らがアルトマンを指示した理由
従業員がアルトマンを指示した理由には2つ理由があります。
- アルトマンCEOの配下でGPT-4等を開発してきた自分たちの仕事に誇りを感じていた。
- 株式公開買い付け(tender offer)を間近に控えていた。
本書では、従業員らがアルトマンを指示した理由は、AよりBの方が大きいとしています。
アルトマンが、この株式公開買い付けを実施する主な目的は、従業員の功に報いるためでした。
従業員が高値で自社株を売却することで、従業員が大金を得る機会を与えたかったのです。
このとき、OpenAIの評価額は860億ドル(12兆円以上)に達すると見られていました。
この機会に自分の持ち株を売却すれば大金を手に入れることが確実視されていたのです。
アルトマンが解雇されれば、株式公開買い付けは流れてしまい、大金を得るチャンスを逃すばかりか自分の持ち株の価値が暴落してしまうことになるでしょう。
アルトマンが社内クーデターを予想していたとは考えにくいですが、結果的に彼を救う大きな要因の1つとなりました。
社内クーデターの首謀者と見られるスツケヴァーに従業員の抗議が殺到しました。
Microsoftからの発表
2023年11月20日、Microsoftから大きな発表がありました。
- アルトマン、ブロックマンを新たに設立するAI研究所のリーダーとして迎え入れる。
- OpenAIの従業員がアルトマン、ブロックマンを追ってMicrosoftに加わろうとするなら誰一人として拒まない。
これは、OpenAI取締役会への脅しとして見る向きがありました。
OpenAIの従業員からも抗議状が公開されました。
取締役会が17日の決定を覆さない限り、自分たちも会社を辞めてMicrosoftに入社する。
OpenAI従業員約770名のうち700名以上がこれに署名しました。
署名者の中には、スツケヴァーも含まれていました。
こうして、クーデターの首謀者と見られるスツケヴァーが寝返ってしまいました。
2023年11月21日、アルトマンはCEOとして、ブロックマンが社長としてOpenAIに復帰することを取締役会は公式に発表しました。
サム・アルトマン解任劇が残したもの
アルトマン、ブロックマンの復帰後、OpenAI取締役会のメンバーも大幅に入れ替わりました。
アルトマンの排除に動いた取締役たちがどうなったのかというと、ヘレン・トナーとターシャ・マッコーリーの2人が辞任。
アダム・ディアンジェロは取締役を継続することになりました。
クーデターの首謀者と見られるスツケヴァーは、取締役を退きました。
アルトマンは、ブログでスツケヴァーに対し「まったく恨みは抱いていない」と述べました。
スツケヴァーは、2024年5月14日にOpenAIを辞職します。
「Safe Super inteligence」というスタートアップを創業し「安全なスーパーAI」を実現する計画を明らかにしました。
アルトマンが解任に至った経緯を調べる独立調査が実施されました。
11月17日に解任されるに至った経緯を調べることが、アルトマンがCEOに復帰する条件でした。
その結果、次の結論に至りました。
アルトマンは当時、解雇に値するような悪事は働いていなかった。
彼が今後もCEOとしてOpenAIを指揮すべきだ。
「実際に何が起きたのか?」
「どのような理由でアルトマンの解任が決まったのか?」
調査結果は、これらを明らかにするような事件の核心に迫る事実は皆無に等しいものでした。
その後、ニューヨークタイムズによって解任劇の内情が報じられました。
上述の調査結果に比べて解任騒動の具体的な経緯がわかるものでしたが、ミラ・ムラティとスツケヴァーは、この内容の自分たちの行動や動機について否定しています。
しかし、否定されていない部分もあります。
サム・アルトマンの悪いウワサ
アルトマンには、「ループト」のCEOを務めていたときから悪いウワサがありました。
周囲の関係者の心理を巧みに操作して自身を利する活動を得意とする。
そのために人を欺くことすら厭わない。
そのようにシリコンバレーで囁かれていました。
そして、その習癖はOpenAIでも見られたといいます。
取締役らは、アルトマンに対し次のように感じていました。
アルトマンは、自分たちを互いに対立させることによって取締役会を操ろうとしている。
アルトマンは、悪事や違法行為を働いているわけではありません。
しかし、取締役らは、溜まり溜まって耐えきれなくなりました。
これが、社内クーデターに結びついた大きな理由だと言われています。
アルトマンは、ニューヨークタイムズの報道に対して「一連の情報には我々を仲違いさせようとする意図があるが、それは機能しない」と述べています。
読んだ感想
本書のサム・アルトマン解任劇の舞台裏をまとめてみました。
いかがだったでしょうか。
まるで、映画のような話でしたね。
そして、知れば知るほど真実がわからず謎が深まる内容でした。
サム・アルトマンは、ヘレン・トナーが発表したOpenAIの製品開発の姿勢を批判し、ライバルの「アンソロピック」を高く評価する論文に気分を害していました。
この解任劇の結果的には、ヘレン・トナーが社外取締役から外れることになりました。
これは、サム・アルトマンの狙い通り…というのは考えすぎですかね。
また、OpenAI社内から高度AIの開発方針の「警戒主義者」の力を削ぎ、「加速主義者」の力が増すことになったと思えます。
この解任劇の出来事が今後のAI開発に大きく影響していくのは間違いないでしょう。
本書のタイトルにある「イーロン・マスクを超える男」の意味は、サム・アルトマンが指揮するOpenAIのAI開発が、イーロン・マスクが目指した「人類に貢献する安全なAGI」と違う方向に進んでいってしまうことを指すのでしょうか。
本書では、何をもってサム・アルトマンがイーロン・マスクを超えたのかについて明言されていません。
「イーロン・マスクを超える男」というタイトルは、ちょっと商業的な狙いでつけられたように思えてしまいます。
あえて言うなら「イーロン・マスクを超える男」より「イーロン・マスク(の予想)を超える男」の方が本書の内容に近いかもしれません。
この記事ではサム・アルトマンという人物、サム・アルトマン解任劇に着目してまとめました。
要約のため、かなりの内容を削ぎ落しています。
本書では、OpenAIの動きを軸にしてGoogle、Microsoft等の起業や研究者の動きも絡めて時系列で説明されているので覇権争いの様子がよくわかります。
また、様々な天才たちの思惑や行動も要約の過程で削っているため本書ですべての内容を知れば、人によっては、また違う印象を持つかもしれません。
さらに、サム・アルトマン解任劇後の話やAI業界が抱える著作権問題なども詳しく知ることができます。
せっかくAI業界の歴史的転換期に生きているので、しっかり情報をおさえていきたいですね。