【要約】『コンセプト・センス 正解のない時代の答えのつくりかた』SENSE of CONCEPT

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ここではないどこかに行きたいーー実現したいのは「現状の延長線上ではない未来」。
「どこか」にたどり着くための羅針盤となるのが「コンセプト」である。

本書の概要

タイトルコンセプト・センス 正解のない時代の答えのつくりかた
発行日2024年1月31日 第1版第1刷発行
2024年1月31日 電子版発行
発行所WAVE出版
著者吉田 将英
著者情報は、上記リンクからご確認ください。

企て(くわだて)ーー人は現実を変えたくて企てる。
コンセプトは、企てを構成する要素となる。
優れたコンセプトは、企ての質と実行力を向上させる。
そして、コンセプトを生み出す感性こそが「コンセプト・センス」である。

主要なポイント・学び

新たな価値創造ーーいま、あなたが立っている場所はその入り口。
「ここではないどこか」を求めるあなたなら「コンセプト・センス」を獲得できる。

なぜ「コンセプト」が必要なのか?

なぜそれが重要か?ーー企てを構成するすべての要素はコンセプトの影響下にある。

人間の社会は「現実→認知→尺度→決定→新たな現実→…」のループである。
これを「認知と現実の循環モデル」という。

  1. 認知ーーそれは何か?
  2. 尺度ーー何を追求するか?
  3. 決定ーーどう決定するか?

「ここではないどこか」は「認知」にあたる。

なぜ「ここではないどこか」を求めるのか

なぜそれが重要か?ーー「ここではないどこか」と「認知」させる「現実」を知ろう。

私たちは「すぎる時代」を生きている。

  1. 情報が多すぎるーー多すぎる選択肢が意思決定を難しくさせる。
    何かに追われている感覚(例:コスパ重視、映画は倍速で見る)。
     
  2. テクノロジーが早すぎるーー何をしても人とかぶっている気がする。
    新しいものを創造できない。
    流行が早すぎて、お気に入りだったはずのものを古く感じてしまう。
     
  3. 向かい風が強すぎるーー社会の暗黙のルール「古い約束」(例:「とりあえず生(ビール)」)
    古い約束を破棄できないため、未来が「現状の延長線上」にしかない。
     
  4. 問いが複雑すぎるーー「あちらを立てればこちらが立たず」の関係ばかり。
    多様性を受け入れず論点を単一化して対処してきた過去から回ってきたツケの支払い時。
    問題にきちんと向き合うほど正解を導くための道しるべを見失う。
     
  5. 「らしさ」が揺らぎすぎるーーSNSで自分と他者を比較しやすくなった。
    自分らしさ等の「○○らしさ」が揺らぐ「アイデンティティ・クライシス」が容易に起きる。

「ここではないどこか」を求める人は、この時代の空気を感じ取っているということ。
それは新たな価値創造の入り口に立てているということだ。

「認知と現実の循環モデル」では、現実と認知は同じ循環の中にある。
この「すぎる時代」こそが「現実」。
しかし、この「現実」をどうにかするのは不可能。

コンセプトは「認知」をリセットする

なぜそれが重要か?ーー「現実」は変えられないが「認知」は変えられる。
「認知」からスタートして「認知と現実の循環モデル」を回して「現実」を動かす。

「もしも自動車がない時代だったら…」と想像して欲しい。
あなたは馬に乗って通勤することに決めたとしよう。

「ここではないどこか」を求めて、もっと速く走る馬に乗り換えても「ここではないどこか」の感覚はなくならない。
「どうしたらもっと良くなるか?」は現状の延長線上にある問いだからだ。

認知を再定義するーー現状の延長線上の企てでは現実を変えることはできない。
だから「そもそも、良いとは何なのか?」と認知を再定義する。
認知を変えるためには「自動車」という「新しいコンセプト」が必要だ。

コンセプトがもたらす「5つの効果」

なぜそれが重要か?ーー正解がない物事を決断することは難しい。
コンセプトは新しい物事に対する意思決定と継続を助ける5つの効果がある。

  1. 定まるーー物事の「認知」「尺度」「決定」の方角が定まる。
  2. 閃くーー「尺度」が定まることでアイデアが閃く。
  3. 際立つーー「まだないものへの期待」「新しい物事」を人に伝えやすくなる。
  4. 集まるーー共通認識化して人、モノ、お金、注目などが集まる。
  5. 続くーー物事が長続きしやすくなる。

「早い」「安い」などは「現状の認知→尺度→決定」をベースにした評価。
「もっと早い」「もっと安い」などが出た瞬間に価値が下がる。
コンセプトは、現状ベースにはない新しい価値の創造を助けてくれる。
そして伝聞のしやすさは、多すぎる情報の中であっても埋もれない拡散力につながる。
現状ではメンバーの世代交代などで意思決定がうまくいかず物事が終了することがよくある。
しかし、コンセプトを共有していれば意思決定に属人性がなくなる。
メンバーがコンセプトによる方向性に基づく意思決定が可能なため物事を継続できる。

コンセプトを構成する3元素「B」「I」「V」

なぜそれが重要か?ーーコンセプトとは、次の3つがベースとなり導き出される概念。

  1. バイアス(Bias)ーーこれまでの思い込み。
    未来が「現状の延長線上」にあると思わせる「認知」。
    「誰の」何に対するどんな「思い込み」なのか。
     
  2. インサイト(Insight)ーー本当はもっとこうしたいのに。
    未来を「現状の延長線上」ではない別の方向に求める「欲」。
    「誰の」何に対するどんな「欲求」なのか。
     
  3. ビジョン(Vision)ーーもっとこうあって欲しい。
    作り手と受け手の「私たちはこうありたい」という「理想」。
    「企ての対象(物事)の」「社会の理想の姿」はどういう状態か。

コンセプトはバイアスとインサイトの間にある。
インサイトを見抜き、バイアスに気づき、コンセプトを探そう。
ビジョンは「ここではないどこか」へ向かう原動力となる。
行動する「アクション(Action)」により「ここではないどこか」は具体化される。

バイアスの見抜き方

なぜそれが重要か?ーーバイアスを自力で解くのは難しい。
バイアスを見抜くためのヒントを知ろう。

「誰の」バイアスなのか?

「みんながそう思っている」ーー「みんな」とは誰か?
「みんな」が含まれる社会とは何かを考えよう。

#コンセプトの対象ーーバイアスを見つけるためには「広い視野」が必要。
次の3つの軸で視野を広げて考えよう。

  1. コンセプトの対象
  2. コンセプトの対象に関わる人たち
  3. コンセプトの対象の周辺要素

コンセプトの対象だけを見てバイアスを探そうとしてはいけない。
SNSの「#コンセプトの対象」(例:#新しいカフェ 等)がカバーするような視野を持とう。

どんな「思い込み」なのか?

歴史思考ーーコンセプトの対象に関する常識ができた背景を考えよう。
「過去~現在~未来」の時間軸で調べると自分の思い込みが見えてくる。
未来は調べることができないので、未来予測を調べる。
バイアスがかかったまま語られる未来予測は、事実ではなく認知に過ぎない。
その認知の「裏をかく」。
そうすれば、コンセプトやビジョンを見つけるヒントにもなる。

内と外の境界線ーー自分と自分以外とを隔てる境界線を探ろう。
自分にはどんな常識があるか?
自分ではない人にはどんな常識があるか?
企ての内側にはどんな常識があるか?
企ての外側にはどんな常識があるか?

「知る」前の自分には二度と戻れないーー調べて知る前に、まず自分だけで考えてみよう。
自分ではない人の常識等、自分だけでは知ることができないものもあるが、調べる前に考える。
知る前の状態で考えることでしか得られない大切なことがある。

インサイトの見つけ方

なぜそれが重要か?ーーコンセプトはバイアスとインサイトの間のジレンマにある。
インサイトがなくバイアスだけでコンセプトを考えたとしたら、それはただの逆張りでしかない。

「誰の」ための企てか?

ターゲットは誰か?ーーたとえば「20代女性」のような表層的な捉え方で終わってはいけない。
「20代女性」にも様々な人がいるし、同じ人物の中にも多様な面がある。

ターゲットの対象を多面的に捉えるーーインサイトを見つけるためには「広い視野」が必要。
次の3つの軸で視野を広げて考えよう。

  1. ターゲットの行為
    (例:入店する、列に並ぶ、買う、テイクアウトする 等)
    行為には感情が伴う(例:列に並んでいる間、緊張する 等)
    企てにより、ターゲットはどんな行為をするか?
    その行為は、どんな欲求を満たすためのものか?
     
  2. ターゲットの価値観
    (例:贅沢とは?、憩いとは?、リラックスとは? 等)
    ターゲットに感じて欲しい価値が、相手のどんな価値観と関係するのか?
     
  3. ターゲットのライフスタイル
    (例:仕事、交友関係、お金の使い方、持ち物、住んでいる街 等)
    実態の正確な把握ではなく、想像の範囲を広げて仮説を立てることが大事。

歴史思考ーー3軸について時間軸でさらに深く考えよう。
その欲求は昔からあったのか?
その欲求は何がきっかけて生まれたのか?
人々の欲求の変化に名前をつける感覚で考える。

どんな「欲求」なのか?

隠れた欲求は何か?ーーターゲット自身が自覚していない欲求は何か?
本人に答えを聞いても、人は自分の欲求を正確に言語化できない。
ターゲットが持つ揺れ幅が大きい感情を起点に仮説を広げて書いてみよう。

  1. すごく楽しみにしていることは何か?
  2. 不安に感じていることは何か?
  3. 我慢してやり過ごしていることは何か?

あなたが、企てを通してターゲットに感じて欲しいと思う感情について考えよう。

  1. 今はその感情は何で満たしているか?
  2. その感情の優先順位は?
  3. どんなときにその感情を満たされると嬉しいか?

ハードルを理解するーーあなたの企ては、ターゲットが持つ「今、欲求を充足させているもの」を超えなければならない。

  1. 「今、欲求を充足させているもの」に感じる不満は何か?
  2. 「今、欲求を充足させているもの」で満足ではない感覚は何か?

ジレンマーーバイアスとインサイトの間にジレンマを探す。
解いてあげたら喜ぶ人が確実にいると確信できるジレンマを見つける。
いいジレンマが見つかればコンセプトはほぼ完成しているといえる。

ビジョンの見通し方

なぜそれが重要か?ーービジョンが加わることで、コンセプトの実現が現実味を帯びてくる。
あなたは、社会がどうなったら嬉しいのか?
あなたのコンセプトの対象が、社会においてどのような存在になることを目指すのか?
まずは、ビジョンを仮決めして書き出す。
それから仮決めしたビジョンを「for」と「by」の2つの軸で方向づけて磨いていく。

  1. for:誰のためを思ったものなのか?
  2. by:誰を起点に生まれたものか?

for other by meーー誰かのための、自分のビジョン。
これが目指すべき理想のビジョン。
「for other」と「by me」を考えながらビジョンをブラッシュアップしていく。

「for other」は誰?ーーあなたの志が向く先にいる人。
誰の為ならエネルギーを一番出せるか?
放っておけない人は誰なのか?
具体的に、実在する人をひとり考えてみる。

「by me」は困難を実現する力ーーあなた自身が志の発信源。
「for other」は誰だった?
あなたが放っておけないことは何か?

違和感、不満、喜び、希望ーー実体験から「by me」を考える。
人生を振り返り、自分にとって大きな出来事は何か?
それを起点にした強い思いが「by me」になる。

コンセプトの見立て方

なぜそれが重要か?ーーコンセプトは「この指とまれ」の魅力的な指として機能する。
ここでは、コンセプトを言葉で書き出すプロセスを紹介する。

とにかく書いてみるーー次のことを意識して「提案」の形で書いてみよう。

  1. 何を価値として提供するか
  2. ポジティブな興味を喚起する

他との違いが感じられないーーそう感じたのならバイアスが弱い。
これまでの価値観で見たとき、違和感や腹立たしさを感じるものでなければバイアスを超越できない。
波風を立てるコンセプトを目指そう。

理屈、事情、都合ばかりーーそう感じたのならインサイトが弱い。
その企ては「誰を喜ばせたくて始まったものなのか?」をよく考えよう。
インサイトが弱いということは、その相手の存在感が薄いということ。
その相手に会いに行ってみよう。

それって素敵なことか?ーーそう疑問に思ったのならビジョンが弱い。
企画を成立させることで頭がいっぱいになっている。
ビジョンに立ち返って考えてみよう。

まとめ・感想

コンセプトは「バイアスで見えない先にあるインサイトを叶えたビジョンを提案する概念」だと思う。
それは企画職だけに限らず、すべての人に必要な羅針盤である。

あなたのコンセプトは何?
コンセプトは、人生という一番大切な企てをも方向付ける。
コンセプトのない人生は、羅針盤を持たずに航海に出るようなもの。
それで目的の場所にたどり着けるわけがない。

自分の人生を企てるーー自分や自分を取り巻く環境のバイアスを見抜く。
そして、自分の本当のインサイトに気づく。
そうすれば、向かうべき理想のビジョンが見えてくる。
自分だけの羅針盤となるコンセプトを形作らなければならない。

コンセプトは作って終わりではない。
羅針盤を眺めているだけでは何も始まらない。
企てを構成する要素のすべてにコンセプトを浸透させる方法等、本書にはコンセプトを作った先のことも記されている。

本書は「コンセプト・センス」という感覚を伝えるものである。
感覚を文字で伝えることは難しい。
だから本書では色々な表現でなんとか読者に伝えようとしてくれているように感じる。
本記事を読んで「よくわからない」という人も本書を読めば理解できる。
本書を読めば、あなたにピンとくる表現が見つかるはずだ。
その文章は、あなたの人生に大きく影響する言葉になるかもしれない。

コンセプトは、波風を立てながらも目的意識を持って力強く進む推進力を生む。
本書を読んで、ぜひ「コンセプト・センス」の詳細をつかみ取って欲しい。

当ブログでも本書の学びを活かしコンセプトを作成してみた。
そのコンセプトは「自分軸成長読書サポート」という。
どんな志でこのコンセプトを作ったのかをプロフィールのページに記したので参照して欲しい。

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