【要約】『世界一流エンジニアの思考法』より少ない時間で価値を最大化するマインドセットの三原則

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タイトル世界一流エンジニアの思考法
発行日2023年10月20日 発行
発行所文藝春秋
著者牛尾 剛
著者情報は、上記リンクからご確認ください。

本書のタイトル「世界一流のエンジニアの思考法」。
世界一流のエンジニアが集まる企業とは、世界中の秀才たちが国境を越えて集まるマイクロソフト。
その超巨大クラウド開発の最前線で働く著者が学んだ思考法とは、どんなものなのでしょうか。

きっと、洗練された効率の良い働き方をしているはず

読む前からとても興味深いです。
その思考法、できることならマネしたい。
そう思い、本書を手にすることにしました。

オススメしたい人

  • 一流エンジニアの思考法を学びたい人
  • 楽しく仕事がしたい人
  • 仕事の生産性を上げたい人
  • 海外で働きたい人

学べること

本書は、著者が海外で経験している「幸せを感じられるような働き方」が日本でもっと広まってほしいという思いから書かれたものです。
実際、本書に書かれた著書の働きぶりはとても楽しそうに感じられます。

VUCAの時代、ソフトウェアのように先の見通しが立てにくい分野での思考法を学ぶことは、すべての分野にとって非常に有用です。

VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、将来の予測が困難な状況を指します。

ここでは、本書の内容の「より少ない時間で価値を最大化するためのマインドセットの三原則」について、私の解釈で簡単にまとめています。
海外の一流のエンジニアの働き方に見た、どうすれば生産性を上げて楽しく仕事をすることができるのかを説明していきます。

「Be Lazy」というマインドセット

「Be Lazy」とは、一流のエンジニアたちが身につけている、仕事を加速するマインドセットです。

Be Lazyは、「怠惰であれ」という意味です。

これは、アジャイル(agile)というソフトウェアの開発手法の1つであるスクラムの非常に重要なポイントです。

アジャイル(agile)

アジャイルやスクラムでは、大きなプロジェクトを小さなステップに分割して、優先度の高い機能から順次開発することで、早い段階から利用価値を提供します。
これにより、利害関係者のフィードバックを受けやすく、効率的な変更や改善が可能になります。
短いイテレーションを通じて繰り返し改善を行い、時間と労力を最大限に活かすことが目指されます。

端的にいうと「より少ない時間で価値を最大化するという考え方」です。
できるだけ最小の労力で楽をする方法を探ろうとするマインドセットです。

一流のエンジニアの優先順位のつけ方
やることに「優先順位をつける」ということは、Be Lazyを達成するための重要な習慣です。
まずは比較のために我々日本人一般の感覚で優先順位をつけるとどうなるかを示します。
たとえば、タスクが5つあるとします。

日本人の優先度のつけ方

タスク ※
タスク □
タスク ▲
タスク ★
タスク ◇

優先順位をつけて、優先度の高いものに集中しましょう。

優先度1 ★
優先度2 ▲
優先度3 □
優先度4 ※
優先度5 ◇

優先度1が終わったら優先度2をやって…
「できればすべて実施したい!」

日本人は、すぐに「あれも、これも」やらないといけないと思いがちです。
しかし、それは悪です。

!?

「すべき」より、「実際にできるキャパ」を考えるほうが生産性には有用です。

それでは、一流のエンジニアはどのように優先順位をつけるのでしょうか。
それは「最初の1個をピックアップしたら他はやらない。その1つにフォーカスしよう」です。
一流のエンジニアの優先度のつけ方を図にすると次のようになります。

一流のエンジニアの優先度のつけ方

タスク ※
タスク □
タスク ▲
タスク ★
タスク ◇

優先順位をつけて、優先度の高いものに集中しましょう。


重要なもの

同じ言葉でも、日本人とアメリカ人ではまるで違う意味に捉えているかもしれません。

100%全部やろうとすると、工数もかさむし時間が足りません。
一流のエンジニアの働き方は、2-8の法則で説明することができます。

2-8の法則

ビジネスや生活において、努力の中で本質的に重要な要素とそうでない要素があることを指します。
具体的には、全体の努力のうち20%の重要な要素に対して80%の成果が生まれるとされます。
この法則はパレートの法則とも呼ばれます。
つまり、重要なポイントに焦点を当て、最も価値のある活動に注力することが効果的であることを示唆しています。

つまり、20%の仕事80%の価値を生むのだから20%をしっかりやればよいのです。
その仕事の残りの80%はやりません。
次の80%の価値を生む20%の仕事をやります。
そうすると、40%の工数160%の価値を持つ仕事を行うことができます。

一流のエンジニアたちは、実施すべき物量が少なく価値が高いものをいかにつくっていくのかの工夫を常日頃からしています。

いかにやることを減らすか?
日本人の感覚からすると全部やらないのは何となく悪いことのように感じてしまいます。
しかし、Be Lazyの精神で「やることを減らす」のは大変すばらしいことです。
「タスクを減らすこと自体に価値がある」と、マインドをリセットすることが重要です。
完璧主義傾向の強い人は、相対的にさほど重要ではないものも「ピカピカ」に磨き上げてしまいます。
これの問題は、重要ではないことにまで過大な工数を使ってしまうことです。
優先順位の低いことはやめて、重要なことだけをピカピカに磨くことで競争力は飛躍的に高まります。
本当に必要なタスクと不要なタスクを見極め、プロセスを改善しましょう。
いかに楽をしてより高い価値を生み出すための具体的な手順を説明します。

1.ひとつだけをピックアップする
「最初の1個をピックアップしたら他はやらない。その1つにフォーカスしよう」という感覚です。
やらないことは、決して悪ではありません。
まず1番インパクトのある1つを確実にすることが大切です。
これは、無論すべてのケースで通用するわけではありません。
しかし、「バリュー」として効果的であることを体感することが重要です。
この癖をつけると時間がないときも、「少なくともポイントを外さない仕事」を高速で回せるようになります。

2.時間を固定して、できることを最大化する
「すべきこと」から時間を計算するとだらだらと延長してしまいがちになります。
一流のエンジニアは、「時間を固定して、その中で価値を最大化する」という行動をとっています。
時間は最大の制約です。
そのため、最大限バリューが出ることにフォーカスして「今日はこの2つだけやろう」といった思考をします。

3.「準備」「持ち帰り」をやめてその場で解決する
日本では会議というと、事前の準備をし、終わった後に議事録を書いたりして様々な課題を検討しなければなりません。
しかし、一流のエンジニアは、常に「会議の場」だけで完結します。
ざっくりしたアジェンダはありますが、準備に時間をかけません。
議事録もその場で要点だけをノートアプリのOneNoteにとって会議の時間内で共有します。
会議後に「持ち帰って検討すること」を滅多に行わず必要な意思決定はその場で行います。
そうすることで、会議の時間を価値の高いものにします。
会議の前にも、後にも時間は不要となり、非常に生産的です。

4.物理的にやることを減らす
日本では、「すべきこと」に対して「どうやって全部やるか?」に頭が使われます。
予定していた要素を外す話にはまずなりません。
一流のエンジニアは、自分の仕事の中で「何をやらないか」をどんどん決めていきます。
計画は、当初の予測であって正解とは限りません。
どんどん仕事を減らし、絶対的に重要なタスクにフォーカスします。
仕事は「どれだけやったか?」ではなく、「どれだけ会社にインパクトを与える仕事ができたか?」の方が重要です。

リスクや間違いを快く受け入れる

「決して失敗は許されない」状況であっても、失敗するときは失敗します。

にんげんだもの

日本では、組織で失敗すると、左遷されたり詰め腹を切らされたりして悲惨な目にあいます。
そのため、リスクとの向き合い方は、日本人にとってはかなり難易度が高いものです。
だから、ビジネスにおけるあらゆる選択肢は、個人としても組織としてもつねに無難な方へと流れてゆきます。
失敗やリスクを恐れる体質は、生産性の面で劇的な低下をもたらします。

一方、アメリカでは失敗や間違いで怒られることは皆無です。
だから、より難しいことへのチャレンジがすごく気楽にできます。
むしろチャレンジしないほうが、会社の将来のリスクを高めます。
「成功しようがしまいが、まずはやってみて、早くフィードバックを得て、早く間違いを修正していくーFail Fastの精神」です。

失敗を受け入れる具体的な実践方法
失敗は、ただの結果です。
「そこでどんなフィードバックを得たか」のほうがはるかに重要です。
ここでは、生産性を飛躍的に高めるための「失敗に学ぶ思考の習慣」について説明します。

1.「フィードバック」を歓迎するムードをつくる
チームメイトが成功したら、みんなで「おめでとう」と言いましょう。
チームメイトが失敗して、失敗事例とその原因のフィードバックをしてくれたら、みんなで「ありがとう」と言いましょう。
職場で「怒る」という選択肢はありません。
その人の評価は、あくまで約束したKPIの達成の可否で行われるべきです。
日々の業務における小さな成功や失敗ではありません。

KPIとは、「Key Performance Indicator」の略です。
企業や組織の目標達成に向けたプロセスや行動を評価するための、具体的な指標をいいます。

チーム内のムードづくりは、上位マネジメントのほうから積極的に仕掛けていくほうがいいでしょう。

2.「検討」をやめて「検証」する
リスクや失敗を怖れると、失敗したくないと過度に慎重になってしまいます。
しかし、机上でいくら慎重に検討しても実際に市場に出したらどういう反応が返ってくるかわかりません。
変更が多いソフトウェアの世界では、アジャイルのように早く実装して、早くフィードバックを得るほうが合理的です。
この「検討より検証を」という考え方は、あらゆる分野に応用可能です。
時間をかけたからといって失敗をゼロにできるわけではありません。
時間をかけている間にライバルはどんどん次に進んでしまいます。
つまり、やらないほうが必ず失敗する確率が増えます。
検討ばかりして、さっさと「やらない」ことのほうが最大のリスクだということを肝に銘じてください。

3.「早く失敗」できるように考える
今の時代、「フィードバックが遅い」ことは致命的な問題になります。
「早く試して、失敗して、フィードバックを受けて素早く方向修正する」ということが求められ、そうでなければ勝負になりません。
早く失敗することは、それ自体に価値があります。
最初から「正しい方法」がわかっている人はいません。
正しい方向性を早く見つけた者が勝つ世界であることを肝に銘じましょう。

不確実性を受け入れる

失敗を快く受け入れるマインドは、「不確実性を受け入れる」ことにもつながります。
これは、日本人がもっとも苦手とする分野の1つかもしれません。
「不確実性の忌避」という文化的性質があり、未来を予見し計画することに時間をかけます。
しかし、VUCA(曖昧で不確実性の高い)の時代では、この性質は大きなマイナスとなってしまいます。
綿密な計画を立てたプロジェクトが実態にそぐわなくとも、当初の「計画通り」に遂行しようとして炎上してしまう場面はしょっちゅうあります。
「計画通り」いかないことは決して「失敗」ではありません。
その第一歩として、「納期は絶対」の神話は捨てましょう。
Q(品質)C(コスト)D(納期)+S(スコープ)は、トレードオフの関係にあります。
納期を短縮したければ、品質を落とすか、お金を払うか、提供する物量(スコープ)を減らすかのいずれかです。
それなのに、日本人は予定通りQCDSをすべて達成するために無理をしすぎる傾向にあります。
それではどうすればいいのでしょうか?
進捗の「実績」だけで状況判断し、「納期」を固定したまま「スコープ」を出し入れするのが現実的です。
計画は、「いまのところは、こういう予定」ぐらいの感覚で見たほうがよいです。
チームのリソースを超えているときは「現実を見て、物量を減らし、より大きな価値を生み出す工夫」をしましょう。
状況は、刻一刻と変化していくものです。
時間をかけて綿密な計画を立てることより変化に対応することのほうがよっぽど大切です。
そのためには、Be Lazyというマインドセットが重要となります。

思考回路を形づくる実践
不確実性を受け入れる「思考回路」をつくる具体的な実践方法を説明します。

1.「楽に達成できる」計画で仕事をする
日本では、「なるはやで」とか「明日までに」というオーダーで仕事を依頼されることが多いです。
しかし、海外ではそうした火急の依頼は「マネジメント能力の欠如」と見なされます。
自分の仕事も、他の人にお願いする仕事も、チェックポイントを早めに設けて余裕を持った日程で計画しましょう。
そして、計画通りが良いという思考は捨ててください。
「たくさん物量をこなすこと=生産性が高い」わけではありません。
生み出すものの「価値」にフォーカスするマインドを身につけましょう。

2.「無理・断る」練習する
ブラジル人と日本人の混成チームのワークショップで次の質問をしました。

質問

「もし、皆さんが仕事で忙しいときに、上司からこの仕事をやって欲しいと言われたらどうしますか?」

回答

日本人

「わかりました。残業でカバーします。」

ブラジル人

「私は今仕事で手一杯だからごめんなさい。」

心理学では「鏡の法則」というものがあります。
自分に適用しているルールを無意識に他人に適用してしまいます。
そのため、納期厳守で働いている人は、他人にもそれを求める傾向にあります。
「無理を承知で」のお願いの連鎖は、みんなの疲弊を生み業務改善に全くつながりません。
あなたが個人としてした無理は、チームとしてのパフォーマンスを下げているかもしれません。
改善するためには、次のようなマインドセットをチームでシェアしましょう。

  • どうしたら楽に達成できる計画に落とし込むことができるか
  • 「ここまでだったら、協力できるよ」というライン

これにより、互いに「これは無理!」が言いやすく、負荷軽減の具体的な施策につながりやすくなります。

3.他の文化の視点を学んでみる
状況が刻一刻と変化する環境下では、時間をかけて綿密な計画を立てることは、ばかばかしくなります。
何故なら、どうせ変わるから。
現実をみてフィードバックを受けて納期等を変えることは、善であり、大切なことです。
ですが、日本人はそうした変更を管理能力のなさと決めつけたり、責任を問う空気が強いです。
しかし、それが、つくり出すものを凡庸にし、生産性を下げ、働く人々のモチベーションを下げる要因になっています。
自分の常識は、他国の非常識であったりすることは多々あります。
多様なスタイルを学ぶことは、各々が主体的に行動しやすくなり、生産性を高めるためのマインドセットにつながります。

読んだ感想

日本とアメリカの労働環境では、次のような違いがあると聞いたことがあります。

  • 日本は法律で社員をクビにできないが、アメリカは社員を解雇できる
  • 日本は残業が多く大きな問題があるが、アメリカは生産性が高く働き方への不満がない
  • 日本は転職のハードルが高いが、アメリカは転職のハードルが低く、やりたいことを追求することができる
  • 日本は休暇を取ることを良しとしないが、アメリカは休みを自由に決めるのは与えられた権利

しかし、生産性の高い働き方という内容についてはあまり知る機会がありませんでした。
本書の内容は、著者が働くマイクロソフトに限っての働き方の話なのでしょうか。
それとも、アメリカでは何処でも当たり前の働き方なのでしょうか。
これがもし日本以外の国々では当たり前の働き方だとすれば、日本の生産性が低い理由は明確です。
本書を読んで、日本の働き方は「様々な面で遅れている」という感想を持ちました。
これは、日本が高度経済成長期の成功体験を忘れられず時代の変化を無視して働き方を変えることができずにいることが原因だと思います。
日本の時計だけが止まっている状態と言えるでしょう。
残念ながら、日本がそれを認識しただけでは解決しない問題です。
日本の文化的性質にも及ぶもので、改善には長い時間が必要だと思います。
仮に日本の時計が動き出したとしても、時間が進むのは日本の時計だけではありません。
きっと、日本が遅れを取り戻すために時間をかけている間に他国はもっと先を行ってしまうのでしょう。
これは、どうにかなる気がしません。
結局のところ、できることは、せめて個人としてできることを意識的に変えていくことです。
そうすることが、日本の止まっている時計を動かすための力になると感じています。

まぁ、私の力なんて極小で、無いに等しいですけどね

個人の力は、とても小さいものです。
しかし、みんなで力を合わせれば力は強くなって、時計の針は早く進むかもしれません。

本書は、「世界一流のエンジニアの思考法」というタイトルであり、ソフトウェア開発における環境を例にした話が多いです。
IT関連の用語も出てくるため馴染みがない人は理解できるか心配になるかもしれませんが、簡単な説明が掲載されているので、まったく問題ありません。
IT関連の用語は、話の主軸には大きく影響しないので、ざっくり雰囲気を感じてもらえれば大丈夫な内容となっています。
もし、「エンジニアの人だけが知っていれば良い内容」と誤解して敬遠してしまうと、それはとてももったいないです。
世界的に大きな影響力を持つマイクロソフトの生産性の高い働き方を知ると、いまの世の中で最も求められる思考や行動がわかります。
日本でも「幸せを感じられるような働き方」ができるように、できるだけたくさんの人と本書の内容を共有したいと思います。

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