イントロダクション
タイトル | : | この保険、解約してもいいですか? |
発行日 | : | 2023年10月23日 初版第1刷発行 2023年11月17日 電子書籍版データ作成日 第1版 |
発行所 | : | 日経BP |
著者 | : | 後田 亨 |
著者情報は、上記リンクからご確認ください。 |
本書に出会う少し前に、収入保障保険の話をしに某代理店に行ってきました。
そこで、「まず、こちらから考えましょう!」と対応してくれた人が勧めてきたのは別件の米ドル建て終身保険。
そこに300万円くらい一時金でぶっこむ投資の話をされました。
・・・それなら、新NISAでインデックス投資の方が良いのでは?
という疑問を頭に浮かべながら話を聞いて、そして何もせずに帰りました。
保険は、本当に仕組みが複雑で難しいです。
そして、暫くして本書との出会い。
「その保険、あなたに本当に必要ですか?」という言葉を見て、その時のことを思い出しました。
私は、複数の保険に入っていて毎月高い保険料を払っています。
「入るべき生命保険はたった1本」と表紙に書かれていますが、それはいったい何なのでしょうか?
必要な保険をじっくり考えて契約したつもりですが、不要な保険に入ってしまっているのでしょうか?
そして、本書を読めば、あの時の疑問を解消することができるのでしょうか?
第三者の立場からの保険のアドバイスが欲しい。
そう思い、本書を手にすることにしました。
オススメしたい人
- 自分に最適な保険を知りたい人
- 第三者の立ち位置の有識者から保険のアドバイスをして欲しい人
- 保険商品の仕組みを知りたい人
- 保険を見直そうとしている人
- 保険について疑問を持っている人
学べること
本書は、著者が行っている有料の生命保険相談の事例の記録を基に作成されています。
そのことから「短時間で読めて、生命保険に関する悩みが一気に解消される本」となっています。
本記事では、本書の内容を私の解釈で簡単にまとめています。
そして、公的保険制度や公的年金制度に関する情報を少し付加しています。
読んでいただいている方が正しい情報を取得しやすいように厚生労働省等の公的なWEBサイトのページのリンクも貼っていますのでご活用ください。
保険とは何か
保険とは、様々なリスクに備えるための制度です。
保険は、多数の人が保険料を出し合って、保険事故が起きた場合に保険金を受け取ることができます。
この「大勢の人」から集めたお金が、「少数の人」に分配される仕組みは、「宝くじ」と同じです。
「不幸くじ」と呼ぶ人もいるそうです。
保険は、「まとまっていないお金」で「まとまったお金」を用意することができます。
つまり、保険は「資金調達の方法」です。
保険の正しい選び方
保険は、自動車保険のように考えるといいです。
- 賠償責任保険は、多くの人が保険金額を「無制限」にして必ず加入する
- 車両保険に入らない人もいる
- 車両保険に入る場合、10万円までの修理費は自己負担する条件を付けて保険料を下げる
その理由
賠償責任保険の保険金は、最悪な場合、億単位のお金がかかるかもしれない。
車両保険の対象になる修理費は、自費でも賄える。
つまり
万一のときに必要なお金が、自分で払えるなら保険を利用しない。
「金額の大きさ」だけで加入の是非を判断している。
「保険で備える」のに向く3条件
自動車保険の入り方に見られるとおり「保険で備える」のに向くことには3つの条件があります。
- めったに起きない
- 自己資金では対応できない大金が必要
- いつ起こるかわからない
この『「保険で備える」のに向く3条件』から次のことがいえます。
- 頻繁に起きることには、保険で備えない。※保険料が高くなる!
- 自己資金で対応できることには、自己資金で対応した方が良い
- いつ起きるかわかっていることなら、その時期を目標に自己資金を増やす
保険会社の人たちは、「不安を安心に変える」と言ったりします。
しかし、すべての不安を安心に変えようとしたら、どれだけ保険に入ってもキリがありません。
素朴に、保険は「資金調達の方法」として評価して冷静に判断しましょう。
医療保険
健康でなくても持病があっても加入できる医療保険。
保障の範囲は、入院はもちろん、風邪や虫歯から集中治療室での治療まで幅広く対応してくれる。
さらに個人の負担に上限を設けている。
そんな「最強の終身医療保険」に私たちは既に入っています。
それは、日本の公的医療保険制度、健康保険と国民健康保険です。
健康保険
健康保険は、企業や団体などで雇用されている人たち、つまり「被雇用者」用の保険です。
国民健康保険
国民健康保険は、健康保険の加入条件を満たさない人たち、つまり「非被雇用者」用の保険です。
医療費の一部を保険組合や自治体が負担してくれるメリットがあります。
保険診療なら、現役世代でも自己負担は3割までです。
70歳以上では原則2割、75歳以上なら1割です。
さらに個人の医療費の自己負担額には上限があります。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療費の自己負担が高額にならないように、一定の上限額を超えた分を支給する制度です。
自己負担の上限額は、年齢や所得によって異なります。
また、世帯で医療費の自己負担額を合算することができます。
たとえば、月初から月末まで、1カ月の医療費が100万円かかったとします。
本書で登場する相談者の会社員40歳男性(妻と子供4歳の3人家族)の例の負担額は、年収370万円~770万円で計算した場合、1カ月8万7430円です。
医療費が100万円かかっても、この金額で済むなんてスゴイ!
多数回該当
多数回該当とは、高額療養費制度の一つの仕組みです。
直近の12カ月間に、既に3回以上高額療養費の支給を受けている場合に、その月の負担の上限額がさらに引き下げられます。
高額療養費制度の詳細は、厚生労働省のWEBサイトでご確認ください。
収入が低くて保険料が安い人も、そうでない人も同じ保障が提供されています。
誰でも同じ医療を受けられるわけです。
大事なことなので繰り返しますが、私たちは既に保障が一生涯続く「最強の終身医療保険」に入っています。
これは、民間の医療保険より断然いい保険です。
その上で、なお民間の保険に入るべきかは冷静によく考えてください。
頻繁に起きることに保険で備えてしまうと保険料が高くなります。
さらに保険は、手数料などの諸費用が高くつく仕組みです。
自己資金で対応できるなら、自己資金で対応した方がいいでしょう。
就業不能保険
就業不能保険とは、病気やけがで長期間働けなくなり、収入が減ってしまうリスクに備える保険です
傷病手当金
会社員が入る健康保険には「傷病手当金」という仕組みがあります。
傷病手当金とは、病気やけがで仕事に行けなくなったときに、健康保険からもらえるお金のことです。
このお金は、仕事を休んだ期間の給料の一部を補ってくれるもので、生活を守るために役立ちます。
傷病手当金をもらうには、次の条件を満たす必要があります。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
傷病手当金の金額は、1日あたりの平均給料の2/3に相当する額です。
支給期間は、最長で1年6ヶ月までです。
民間の就業不能保険は、精神疾患で働けなくなったときの保障は限定的です。
しかし、現実には、精神疾患で休業するケースは非常に多いのです。
傷病手当金は、精神疾患でも支給されます。
民間の就業不能保険よりも役に立ちます。
傷病手当金の詳細は、全国健康保険協会のWEBサイトでご確認ください。
全国健康保険協会:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
残念ながら、自営業者が入る「国民健康保険」には傷病手当金がありません。
民間の就業不能保険を考える際も自動車保険のように考えて冷静に判断しましょう。
死亡保険
死亡保険とは、被保険者が死亡した場合に、受取人に保険金が支払われる生命保険の一種です。
死亡保険について考える際は、「遺族が月々いくらあれば何とか暮らしていけるか」を家族で話し合って決めることが大切です。
保険金額を大きくしようとすると保険料も高くなります。
その際、まずは国の「遺族年金」を考慮しましょう。
遺族年金
遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。
本書で登場する相談者の会社員40歳男性(妻と子供4歳の3人家族)の例では、これまでの年収の平均が600万円として計算した場合、お子さんの高校卒業まで毎月14万円、年額で168万円が給付されます。
年金の保険料は、老後の年金になるお金のためだけじゃないんですね。
遺族年金の詳細は、日本年金機構のWEBサイトでご確認ください。
遺族年金は、立派な「収入保障保険」です。
収入保障保険とは、被保険者が死亡または高度障害になった場合に、一括ではなく毎月一定額の保険金を受け取ることができる死亡保険の一種です。
他にも病気やケガで障害が残った場合に給付される「障害年金」も含まれています。
あとは遺族年金に、毎月上乗せでいくらあったら遺族が生活できるかを考えるといいでしょう。
お金の出どころは保険でなくていい
たとえば、子どもの大学入学に必要なお金を増やすためには「学資保険」、老後の生活に必要なお金を増やすためには「終身保険」…
このように、お金の使い道によってお金の増やし方を分ける必要はあるのでしょうか?
本書で紹介される考え方は、こうです。
お金を用意する方法は、何でもいい
進学資金だからといって学資保険で用意しなくたっていい。
老後資金を終身保険で用意する必要は無い。
「お金が増えやすい」と評価できる方法がある場合、使い道が何であろうが迷わずその方法を採用した方がいいはずです。
そして、子どもの進学も老後も急に訪れるわけではありません。
お金が必要になる時期は、あらかじめ、見当がつくでしょう。
いつ起きるかわかっていることなら、保険を使うより、その時期を目標に自己資金を増やしていく方がいいです。
「自己資金を増やす」とは、具体的には、たとえば「NISA」などのお金の運用です。
お金の計画を立てるためにお金の勉強をして正しい知識を身につけましょう。
読んだ感想
本書を読んで、保険のことを考える際、社会保険のことはすっかり頭にないまま検討していました。
私たちが既に高い保険料で加入している社会保険のことをもっとちゃんと知るべきでした。
「保険は自動車保険のように考える」、「社会保険のことを踏まえて考える」の2つのことをおさえて冷静に判断すれば自分に必要な保険を選択できることを本書から学ぶことができました。
保険に入る目的は、たとえば医療保険ならケガや事故など万が一のときに「安心して治療を受けるため」だと思います。
それは、「安心をお金で買っている」から保険料がもったいないと、私は思っていませんでした。
あのディオ・ブランド―は、かつて次のように言っています。
「人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる」
とても共感できる言葉だと思います。
安心を得るために民間の保険は、役に立っていると思います。
しかし、社会保険のことを踏まえて考えると少し保険をかけすぎている気がしています。
冒頭の「米ドル建て終身保険」を勧められたときの話です。
このとき、そもそも2024年から新NISAが始まるので「お金が必要になる時期が予めわかっていること」に対しては保険ではなく「自分で投資信託等で増やした方が良いのでは?」と思うようになっていました。
代理店で勧められた保険の平均利回りを聞くと、今現在私が投資している銘柄の方が良かったのです。
それだけでなく、私にとっては、そのとき初めて聞く保険よりも自分で調べて投資している銘柄の方が安心できるものだと感じました。
そのため、その「米ドル建て終身保険」にはまったく興味を示さなかったわけですが、本書を読んで、その選択が間違っていなかったことがわかりました。
さらに「米ドル建て終身保険」に入らない方が良い理由は、利回りだけではなかったのです。
入らない方がいい最大の理由は「良心的な投資信託と比較して20倍近い手数料がかかる仕組み」。
販売手数料などの諸費用が非常に高いのですが、保険会社はそのことを説明しません。
本当に、入らなくて良かった。
と確信を持って思うことができるようになりました。
本書に書かれていることですが、「保険は、お金をお金に換える仕組み」です。
一方だけ情報を握って明かさないのはフェアじゃないですよね。
こうやって新規の保険に対しては正しい判断ができるようになったとしても、それ以上に判断が難しいのは既に入っている保険に対してだと思います。
たとえば、「米ドル建て終身保険」の場合、代理店の人は「いま、すごく人気があるんです。」と言っていましたので、入っている人は多いかもしれません。
既に加入している人が、さきほどの「良心的な投資信託と比較して20倍近い手数料がかかる仕組み」を知ると、「それならすぐに解約しなきゃ!」となるかもしれません。
しかし、話はそんなに単純ではないのです。
話が単純ではない理由、それは「元本割れ期間がある」ということです。
初期費用が高額なため、元本割れ期間が長く、かなりの長期運用でないと返戻率は100%を超えることができません。
「じゃあ、どうすればいいの?」と、なると思います。
いまの保険を実際にどうすればいいのかを考えると、わからなくなるのは「終身保険」に限った話だけではないでしょう。
たとえば、「ガン保険はどうしたらいいの?」とか。
保険の話は複雑でわかりにくいですが、とても重要なことです。
いったい、どうすれば……?
そう思った方におススメしたいのが本書。
本書は、あなたに良いアドバイスを与えてくれることでしょう。
「保険商品を売る側ではない、だけど、ちゃんと知識を持った人のアドバイスが欲しい」と思ったことはありませんか?
本書では、保険に詳しい著者が保険の「常識」を教えてくれます。
保険の提案を断るいい方法まで教えてくれる、絶対に損にならない情報ばかりが掲載されています。
本書で保険の「常識」を知って、正しく保険を選択できるようになってみてはいかがでしょうか。