はじめに:「やりたくない仕事をしている」と感じる人へ
仕事に行きたくない。
今の生活は、何かが違う。
何かを変えなければならない。
確信を持って、そう言うことができる。
でも…何を?どうやって?
毎朝、この問いに答えを出せず思考は振出しに戻る。
やりたくない仕事をするために今日も会社に向かう。
今回は、幻冬舎から出版された「自分の変え方 認知科学コーチングで新しい自分に会いに行く」(著者:村岡 大樹)を読み、なぜ認知科学のコーチングで自分を変えられるのかについてをご紹介します。
書籍の基本情報
タイトル | : | 自分の変え方 認知科学コーチングで新しい自分に会いに行く |
発行日 | : | 2025年4月 |
著者 | : | 村岡 大樹 |
発行所 | : | 幻冬舎 |
詳細 | : | 自分の変え方 認知科学コーチングで新しい自分に会いに行く (幻冬舎単行本) |
主要なポイント・学び
本書では、認知科学をベースにしたコーチングで「自分を変えていく方法」を学ぶことができます。
それは、人生を変えるために「何を?どうやって?」の問いの答えを知ることにつながります。
ここでは、なぜ認知科学のコーチングで自分を変えられるのかについて説明します。
「自分を変える」とは?
「自分を変える」ということは、別人になるということではありません。
変えるのは「自分の生き方」です。
私たちは、子どもの頃から「テストでいい成績をとった」とか「誰と比べてよくできた」など、誰かに定められた評価軸の中で生きてきました。
そのため「世間がいいというもの」を「自分にとってもいいもの」と思ってしまいます。
このように、多くの人は「他人軸」で生きています。
しかし、「世間がいいというもの」が「自分にとってもいいもの」とは限りません。
他人軸で生きていると「自分自身の幸せ」から遠ざかってしまうかもしれません。
「自分自身の幸せ」のために自分軸で生きましょう。
そのためには、「自分の無意識」が発する「心の声」を聞けるようにならなければなりません。
今の自分の生き方の外側にGOALを設定する
「今の生き方には自分が望む未来はない」と感じるなら「今の生き方」を変えなければなりません。
「今の生き方」とは、過去、現在、未来を含めた長いゾーンを指します。
自分の幸せな状態に向かうGOALを設定しましょう。
そのためには、GOALを今の自分の生き方の外側に設定しなければなりません。

これを本書では、ポケモンで例えています。
GOAL設定は「現在の自分」から「自分の進化系」にジャンプするイメージです。
「ほのお」タイプのヒトカゲは、リザードン(最終進化形態)に進化することができます。
ヒトカゲは「こおり」タイプの技「れいとうビーム」を習得するのは不可能です。
そして「ノーマル」タイプの技「メガトンパンチ」を覚えても威力を発揮することはできません。
ヒトカゲは「ほのお」タイプの技「かえんほうしゃ」を覚えるべきです。
今の自分の生き方を変えるからこそ、人は自分を変えることができます。
そして「自分を変える」とは、あなた自身の進化系になることです。
あなたは、自分が「何タイプなのか?」を知らなければなりません。
そして、自分にあった技を覚えていくのです。
そのためには「自己理解」が必要です。
無意識
「今の生き方」を変えていくための大きなカギを握っているのが「無意識」です。
アメリカの心理学者・行動経済学者のダニエル・カーネマン氏が提唱した「二重過程理論」には、「システム1」「システム2」という概念があります。
ダニエル・カーネマン氏は、システム1とシステム2のパワーを次のように例えています。
無意識(システム1)と有意識(システム2)では、「2万:1」くらいの差があることになります。

つまり、無意識には、意思決定のほとんどに影響を与える強いパワーがあることを意味しています。
あなたは、自分の人生を創っている「無意識」について深く理解する必要があります。
「ホメオスタシス(生体恒常性)」と「コンフォートゾーン」
人間には「変わりたくない」という本能が備わっています。
その本能の働きのことを「ホメオスタシス(生体恒常性)」と呼びます。

ホメオスタシスが正常に機能することにより、体温や血液量、血糖値などを一定に保つことができます。
つまり、ホメオスタシスとは「自分にとって快適な領域」にとどまろうとする習性のことです。
そして「自分にとって快適な領域」のことを「コンフォートゾーン」と呼びます。

ホメオスタシスの機能があるため、人はなかなか変わることができません。
自分にとって快適な領域に留まろうとします。

モチベーション
人はコンフォートゾーンから外れて急激に変化すると、元の状態に戻ろうとします。
このコンフォートゾーンに戻ろうとする力を「モチベーション」と呼びます。



RAS(Reticular Activating System:網様体賦活系)
私たちの周りには、膨大な情報があります。
そのすべての情報を取り入れると、その情報量のため脳はパンクしてしまいます。
RASは、そうならないために情報を取捨選択するフィルターの役割をする脳の機能です。
RASが情報を取捨選択する基準は「無意識の中にある重要関数」によって決まります。
人間の脳は無意識的に「自分にとって重要と信じていること」しかインプットできません。
「自分にとって重要と信じていること」は、RASの重要関数による順位付けにより決まります。
RASが生き方に与える影響は絶大です。
「今の生き方」を変えるためには、RASの重要関数を変えなければなりません。
RASの重要関数は、あなたの「信念」の中にあります。

信念
RASの重要関数に影響を与える「信念」は、無意識の中にあります。

ここで言う「信念」は「自分で信じると決めたもの」という意味ではありません。
認知科学の世界で「ビリーフ(belief)」と呼ばれるもので「自分でも気づかずに思い込んでいること」を意味します。
そして、信念には、先天的な要素と後天的な要素があります。
後天的な信念は、生まれてから21歳くらいまでに形成されます。
後天的な信念の形成には、家族や学校の先生などの庇護者や権威者の言動が大きく影響します。
信念は、あなたの選択・行動を方向づけ、結果を生み出しています。
先天的な気質を伸ばすような後天的な信念を身につけている人は、大きな影響力を持っています。
反対に先天的な気質を抑えるような後天的な信念を身につけてしまった人は、本来の力をうまく活かすことができません。
また、信念は年齢が上がるにつれて強化されて変えることが難しくなっていきます。
プラスになる信念は残せばいいですが、マイナスになる信念は書き換えた方がいいでしょう。
エフィカシー
「今の生き方の外側」にGOALを設定することは、コンフォートゾーンから飛び出すことです。
それは、ホメオスタシスの働きにより難しいことを説明しました。
人は、外側に飛び出すことに強い恐怖心を抱きます。
では、どうすればいいのでしょうか?
外側に飛び出すことができない人は「エフィカシー」が足りていません。
そのため、エフィカシーを高める必要があります。

エフィカシーとは、日本語で「自己効力感」と訳されます。
つまり、GOALに対する自己能力の自己評価です。
簡単に言うと「何だかできる気がする」という自信です。
エフィカシーは、無意識で「自分自身が自分をどう思っているか」ということです。
そのため、有意識で「高くしよう」と思ってコントロールできるものではありません。
エフィカシーの高低のレベルは、これまでの経験によって左右されます。
例えば、子どもの頃に親から「お前なんか生まなきゃよかった」と言われたことがある人は、エフィカシーが非常に低い状態であることが多いです。
エフィカシーの低い人は、自己否定の状態から自己肯定の状態に引き上げるプロセスが必要です。
自己否定が非常に強い人は、カウンセリングなどで自己肯定できる状態をつくると良いでしょう。
自己理解
GOALは「自己理解」の土台の上に設定されます。
自己理解は、次の3つの洗い出しによって行うことができます。
- 自己欲求:無意識の中にある欲求
欲求とは、無意識のうちに身体が動いてしまうこと。
それは「誰かに止められても思わずやってしまうこと」や「苦もなくやってきたこと」です。
答えは、あなたの過去にあります。
- 自己能力:動作・行動の勝ちパターン
これまで仕事で体験してきた業務を分解して書き出してください。
その中に「自分はこの業務が得意かも」と思うものを見つけていきましょう。
ポケモンで言えば、あなたにとっての必殺技となるものです。
- 自己機能:世の中から「~屋さん」と認識されているか
自己欲求、自己能力を踏まえて、お金を貰えるレベルでどのような行動で貢献していますか?
世の中にある職業名に縛られて考えないでください。
これの目的は、世の中から必要とされている行動をフレーズ化することです。
例えば「人の話を聞いてあげる屋さん」「人の意欲に火をつける屋さん」といった感じです。
あなたの自己機能を発揮できる職種は、きっと少なくないはずです。
自己理解は、エフィカシーを上げることにも役立ちます。
自己理解を終えた後は、今の自分の生き方の外側にGOALを設定します。
コンフォートゾーンを飛び出すことになりますが、それは誰にとっても恐怖です。
エフィカシーを高めることは、そのときの助けになります。

GOAL設定
自己理解をした上で「GOAL設定」を行います。
設定するGOALは、次の3つの条件をすべて満たしたものになります。
- 今の生き方の外側である
GOALは、今の生き方の外側に設定する必要があります。
考える際は、別人になろうとしないでください。
「自分自身の進化系を目指す」というイメージが大切です。
- 並列的である
並列的とは「GOAL世界がうまく回っている」という意味です。
GOAL世界で生きている光景を思い浮かべてください。
その世界で本当に充実した人生を送れていますか?
仕事、ファイナンス、健康・美容、家族、人間関係、社会貢献、教育、趣味の8項目でチェックしてみてください。
この8項目で「うまく回っている」というイメージを描けたらOKです。
- 自己欲求に根ざしている
自己欲求を貫き、自己能力を発揮し、自己機能の職で人の役に立っている。
それこそが、あなたが追い求めるべき天職です。
やり方がわからなくてもGOALはそのまま置いておく
「GOALへの行き方がわからない」という場合は、そのままにしておきましょう。
認知科学のコーチングでは、これを「invent on the way」と表現します。
- invent:開発する
- on the way:道の途中で
脳の機能は非常に高度で、空白の部分があるとそれを埋めようとします。
RASの重要関数が変わることで、今のあなたに重要な情報を見聞きする機会が増えます。
GOALに進む方法は、自然とわかるときが訪れます。
「GOALは必ず達成すべきもの」は、誤解
「GOALは必ず達成すべきもの」という誤解は捨ててください。
達成可能ということは、今の生き方の内側にあるGOALということです。
今の生き方では達成できないからこそ、何かを変えるアプローチが必要になるのです。
たとえGOALが達成できなくても、あなたの信念には変化が起こります。
重要なのは「自分が変わらなければたどり着けないGOALに執着しきる」ことです。
コンフォートゾーンが未来にズレる
人間の脳には「今」か「未来」かは関係ありません。
より強い臨場感を抱ける方を「コンフォートゾーン」とする特性があります。

今の生き方の外側のGOAL世界に対し、より強い臨場感を抱くと、そちらがコンフォートゾーンとなります。
この現象を「コンフォートゾーンが未来にズレる」と表現します。
この場合、モチベーションは、今の生き方ではなく、今の生き方の外側のGOAL世界に戻るように働きます。

例えとして、甲子園優勝を目指している高校球児の場合で考えてみましょう。
この高校球児は、甲子園優勝をGOALと設定しています。
そして、そのGOALに対してより強い臨場感を抱けば、モチベーションは甲子園優勝のためのエネルギーとして働きます。

まとめ・感想
「自分を変える」とは「今の自分の生き方」を変えることです。
そして、「今の自分の生き方」を変えるためには「今の自分の生き方」の外側にGOALを設定する必要があります。
しかし、人は変化を嫌うもの。
コンフォートゾーンである「今の自分の生き方」から飛び出すことは簡単なことではありません。
では、どうすればいいのでしょうか?
そのカギを握っているのが「無意識」です。
自分の無意識を通して「自己理解」を深めるのです。
自己理解により、自分の「タイプ」や「必殺技」を自覚することになります。
そのことは、エフィカシーを上げてコンフォートゾーンを飛び出す助けになります。
また、自己理解を踏まえると、他人軸ではなく自分軸でGOALを設定できるようになります。
GOALが次の3つの条件を満たしているかを確認しながら、自己理解とGOAL設定のステップを行ったり来たりします。
- 今の生き方の外側である
- 並列的である
- 自己欲求に根ざしている
そうすることで、自分に響く生き方ができる状態をつくり上げていきます。
認知科学のコーチングは、大前提としてひとりで行うものではありません。
しかし、本書では、そんな認知科学のコーチングをひとりで体感できるように書かれています。
「ひとりで行うのは難しい」という断りがされていますが、私のような内向型の人間であればひとりでひっそり自分のペースで行えるのは、ありがたいことです。
その内容は、実際のコーチングセッションで使用されるワークを行ったり、質問に答えていくというもの。
それは、ポケモンで例えると自分が何タイプなのかを探り、どんな必殺技を持っているのかを確認していく作業と言えます。
実践してみてわかったことは、自己理解を踏まえたGOAL設定を上手に行うことが自分を変えるための要の作業だということです。
半端な自己理解や半端なGOAL設定を行ってしまうと、エフィカシー不足でコンフォートゾーンである今の生き方を抜け出すことができなくなります。
GOAL世界に行きたいのに行くことができない、幸せになりたいのに幸せになれない辛い状況を生み出してしまう危険があります。
実際の認知科学のコーチングは、3ヶ月から1年かけて行うそうです。
「自分を変えたい」と、はやる気持ちを抑えて、じっくり自分の無意識と根気強く向き合い続ける。
これが、本書の内容を実践する上で、とても重要なことだと感じました。
ひとりでは難しいことなので、本格的な認知科学コーチングを受けたい人はプロの力を頼るのが良さそうです。