【レビュー】『ラストカルテ ー法獣医学者 当麻健匠の記憶ー』 おすすめマンガ!

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マンガ

イントロダクション

タイトルラストカルテ ー法獣医学者 当麻健匠の記憶ー
出版社小学館
著者浅山わかび

週刊少年サンデーの2022年第8号より連載を開始した『ラストカルテ ー法獣医学者 当麻健匠の記憶ー』。
この物語は「法獣医学」という、まだ新しい学問を題材にしたミステリーです。
もともとミステリー好きであり、さらに「法獣医学」への興味もあり、私は吸い込まれるように読み始めていました。

オススメしたい人

  • 動物が好きな人
  • 獣医を目指している人
  • 法獣医学に興味がある人
  • ミステリーが好きな人

ストーリー

主人公 当麻健匠は、偶然、獣医師がカラスの変死体を回収する現場を目撃します。
獣医師の隣には、同級生 茨戸爽介 の姿がありました。
茨戸の誘いを受けてカラスの死因の調査に関わることになった当麻は、獣医師である茨戸の姉 雷火から「法獣医学」の存在を知ることになります。
ここから、将来日本に「法獣医学」を広める男、当麻健匠の物語が動き出します。
以降、当麻と茨戸は獣医を目指しながら動物たちと向き合っていきます。

「法獣医学」とは

法医学の動物版って行ったらわかりやすいかな?
『法医学』っていうのは犯罪捜査や裁判など、法の適用過程で必要とされる医学的事項ね。

『ラストカルテ ―法獣医学者 当麻健匠の記憶― 第1話』より

『法獣医学』は死体を扱うからって悲しい学問じゃない。
人間も動物も生きるための学問・・・

そうだろ?

『ラストカルテ ―法獣医学者 当麻健匠の記憶― 第1話』より

登場人物の紹介

当麻健匠(とうま けんしょう)
この物語の主人公で、物語開始時は高校生。
動物が好きで、動物の感情を想像できる。
同級生の茨戸の誘いをきっかけに法獣医学に興味を持ち、獣医を目指す。
類い稀なる記憶力があり、興味を持った人や物事を覚えているが勉強には発揮できない。
自分自身を覚えてもらえないことが寂しくて?髪を白くして目立たせている。
女装時の名前は、健子ちゃん。

茨戸爽介(ばらと そうすけ)
物語開始時は高校生で、当麻とはクラスメイト。
獣医である姉・雷火の仕事を手伝っている。
当麻に獣医の知識を多く教える一方、当麻からポジティブな影響を受けて互いに成長していく。
見た目も中身もクールだが、獣医の仕事や動物に関することでは熱い一面も持っている。
当間の特殊性に気づき、認め始めている。
動物の鳴き声当てクイズが得意。
変装は即バレする。

茨戸雷火(ばらと らいか)
茨戸爽介の姉で、野生動物医療センターで獣医の仕事をしている。
性格は爽介と真逆で明るい。
寄生虫が大好き。
独自のファッションセンスを持っているが、常識的な服を着ることもありTPOはわきまえている?

滝瀬露子(たきせ つゆこ)
美森大学で獣医について学んでいる。
進化の謎に興味を持つ。
内蔵大好き、解剖大好き。
付き合いの長い雷火でも彼女の本音はわからない。
茨戸爽介の進化を見ることも楽しみ。

読んだ感想

「法獣医学」と聞くと、難しい話なのかなと思ってしまいますが、作中のキャラクター同士のやり取りはコメディタッチなので気軽に読み進めることができます。
動物の生態や獣医の知識が必要なところでは、都度、各キャラクターが丁寧な説明をしてくれるので、そこで躓く心配は無く、むしろ興味深く読むことができます。

コメディタッチで物語は進行するのですが、動物たちの健康や死の真相に迫る場面、事件性のある出来事についてはシリアスな雰囲気に変わります。
彼らが動物たちにどれだけ真剣に向き合っているかを感じることができます。

このマンガの特徴として、1つの物語のラストの区切りとして「セリフの無いシーン」が多く続きます。
当麻が絶対にその場に居合わせないシーンが含まれているため物語の締めくくりで「実際には、こんな事がありました」という事実が語られているようにも見えます。
しかし、この描写は、いつも当麻が動物たちのことを想うシーンから続いています。
(毎回、チェックしたわけではないので、違ったらごめんなさい)
実際のところは描かれていることが「事実」なのか、「当麻が頭の中で考えた空想」なのかはわかりません。
どちらも混ざっている「両方」という可能性もあります。
当麻が居合わせたところや人から聞いた内容については事実が含まれているかもしれませんが、私は「当麻が頭の中で考えた空想」がほとんどの割合を占めていると思っています。

ここでは、「セリフの無いシーン」は「当麻が頭の中で考えた空想」という前提で感想を続けていきたいと思います。
この「セリフの無いシーン」は、特に動物たちに対する画力が凄くて、動物たちが懸命に生きた生前の姿が描かれていたり、死の直前が描かれたりしています。
動物たちが何を思って生きて、そして、最期に見た景色は何だったのか等を想像させられてしまいます。
そのことで私たち読者は、動物たち一つ一つの命の重さ、尊さを半ば強制的に感じることになります。

今回、「何故そう感じてしまうのか?」について考えてみました。
先ほども述べた通り、これは「当麻が頭の中で考えた空想」です。
つまり、私たちは「当麻の動物たちに対する想い」に触れて当麻に共感して感動しているわけです。
これが、当麻の周囲にいる茨戸たちが、当麻を注目する「特殊性」だと言えます。

茨戸は、当麻よりずっと以前から獣医の手伝いをして知識も経験もあるので重宝されて色々な出来事に関わることができます。
しかし、当麻は違います。
当麻は、獣医を志しているとはいえ、経験も知識も乏しい学生です。
それなのにも関わらず、当麻も茨戸と一緒に事件等に関わることができる理由は何なのでしょうか?
当麻は茨戸の友達だから?
たしかに、最初はその理由もあったかもしれません。
雷火さんが、弟の友達に興味を持った可能性は高いです。
ここが当麻にとっての獣医を目指す大きな分岐点であり、最大の幸運だったと思います。
ですが、弟の友達を見たいだけなら1回で十分で、毎回の参加の許可が出るとは思えません。

当麻は、記憶力が凄かったり、行動力が凄かったり、性格的にも魅力のあるキャラクターですが、それが決定的な理由ではないと思います。
当麻よりも獣医として知識も経験も凄い人たちが彼に注目する理由とは何か?
その答えが、この「セリフの無いシーン」にあります。
これが、記憶力でも行動力でもない、当麻の真の凄さです。
当麻の真の凄さについて、言葉にすると、何か違ってしまう気もしますが、あえて表現します。
当麻の真の凄さとは「周囲を巻き込む程の動物たちに対する想い」です。
私たちは「セリフの無いシーン」で当麻の真の凄さを目の当たりにし、体験しているのです。

この「セリフの無いシーン」は、動物たちの他に関わった人間たちも描かれることがあります。
例えば、その動物がペットとして飼われていた場合は、その飼い主さんです。
この描写も「当麻が頭の中で考えた空想」であるとすると、事実とは異なるのかもしれません。
ここには、当麻が考える「人間と動物の関係性はこうであって欲しい」「こういう温かい感情や関係性であって欲しい」という想いが込められているのではないでしょうか。

人によって見方は色々だと思うので違う感想を持つ人もいると思います。
この「セリフの無いシーン」が実際は何なのかということはわかりません。
浅山わかび先生がこの感想を見たら「は?違うが?」と言われてしまうかもしれません。
今後、作中でその答えが描かれることがあればはっきりしますが、私はこれを「当麻が頭の中で考えた空想」と思って、今後の物語も読んでいきたいと思います。

最後に、『ラストカルテ(Last Karte)』というタイトルについて書きたいと思います。
カルテとは、診療記録、病床録のことです。
記録対象が死んでしまった後に残す記録であるため、この名前がついたと考えています。
「法獣医学」の獣医師達が関わったものは、当然、何らかの形で記録が残されると思いますが、この物理的に残るカルテとは違った意味だと思っています。
また「セリフの無いシーン」の話になりますが、これは当麻が動物たちの記録を頭の中に残す行為であり、これが『ラストカルテ』なのではないかと思います。
当麻は、興味対象になったもののことを忘れません。
つまり、当麻がいる限り、起こった出来事は記録として残り続けるわけです。
しかし、当麻は「当麻が頭の中で考えた空想」を含めて残したいのです。
そのため、正式な記録として物理的に残すことはできません。
だから当麻は自分の記憶に留めるのです。

この物語のタイトルは、『ラストカルテ ー法獣医学者 当麻健匠の記憶ー』。
『ラストカルテ』とは、「記録」ではなく「記憶」なのです。

あなたは、『ラストカルテ ー法獣医学者 当麻健匠の記憶ー』を読んでどう感じるでしょうか?


少年サンデー公式サイトで試し読みができます(2023年8月13日現在)

『ラストカルテ ―法獣医学者 当麻健匠の記憶―』 浅山わかび
https://websunday.net/work/18607/

『ラストカルテ ―法獣医学者 当麻健匠の記憶―』は、本当に素晴らしい作品なので、たくさんの人に読んで欲しいです。

浅山わかび先生を応援しています。


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