イントロダクション
タイトル:DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー
発行日:2022年12月23日
発行元:幻冬舎メディアコンサルティング
著者:中西聖
本書は、著者がDXの失敗と成功を経験したからこそ分かる、DXの落とし穴とその克服法を教えてくれます。
本書を読めば、DXを成功させるための思考と行動が身につくでしょう。
これからDXに挑戦する、もしくは挑戦しているけどうまくいかない中小・中堅企業の社長及び担当者に大変役立つ内容となっています。
DXとは、Digital Transformation(X)のことです。
DXについて、しっかりした知識を持たずにいた私ですが、仕事でDXに少し関りを持つことになりました。
そのため、勉強の必要があって本書を手にすることにしました。
オススメしたい人
- DXに挑戦する中小・中堅組織のトップの人
- DX導入の担当者の人
- DXを導入する組織に所属するすべての人
学べること
本書は、著者がDXに挑んだ際に経験した失敗と成功のストーリーを通して、読者にDXの実践法を教えてくれます。
ここでは、本書の内容を基にDXプロジェクトの立ち上げ時からどうしていくべきかを私の解釈で簡単にまとめています。
得られる知識は、失敗体験を読んでこそ活かされるため正しく知って実践したい人は本書を購入して読んでいただくことをオススメします。
長期目標の設定
ロードマップのゴールとなる長期目標の設定は、DX化の目的を明確に掲げることが重要です。
明確な長期目標は、さまざまな判断基準(ツール選定等)をつくることに繋がります。
また、組織内の理解を得られるセンテンスにしっかりまとめることが必要です。
DXチームのメンバー選出
DXは片手間でできるものではありません。
本気で生産性を上げ組織に変革をもたらすためにDXに取り組むのであれば、組織もそのためにリソースを注入する必要があります。
DXの担当には、次の素養を持った優秀な人材を専任としてアサインしましょう。
(ITリテラシーはあるにこしたことはないがそこまで重要ではない)
- 高いコミュニケーション能力
- 変革意欲
- 地頭(仮説思考力・抽象化思考力(具体的な事象を理論化・法則化する力))
DXリテラシーは「実際に生産性を上げること」「業務のフローを変革すること」によって組織の戦略や組織そのもののあり方などを変革することでありITリテラシーとは異なります。
(DXリテラシーについては、経済産業省がDXリテラシー標準という指針を作成しています)
世の中は、時代の変化とともに登場する新たなツールによって便利になっていくでしょう。
その変化を理解し、進むDX環境に適応できる人材であることが求められます。
組織内に専任になれる人がいないなら外部の協力者を獲得するしかありません。
また、DXの導入後もDXを進化させていくためにはDXの担当者だけではなく全社員がDXリテラシーを向上させていかなければなりません。
そのための体制づくりは、マネジメント側の非常に重要な仕事です。
ロードマップ
ロードマップは、精度の粗いもので良いので作ってしまいましょう。
(ロードマップとは、目標達成するまでに行うべきことを時系列順にまとめた計画案のことです)
ロードマップができたらアジャイル的に取り組みましょう。
(アジャイルとは、方針の変更やニーズの変化などに機敏に対応する能力を意味します)
やってみることは、大事です。失敗体験、成功体験からわかることもあります。
うまくいかないことがあればその都度修正してマップの精度を高めましょう。
また、失敗体験、成功体験を通じて、DXリテラシー(効果の定量的な算出能力や効果的な案件の発想やその取捨選択判断)を身につけていくことができます。
PDCA
PDCA「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)」を回していきましょう。
特にDXにおいては「Check(評価)」と「Action(改善)」が重要です。
Plan(計画)・Do(実行)
DXプロジェクトの意義と目的を現場社員と共有し明確に理解するための判断軸が必要です。
経営レイヤーのKPIとDXチームや現場社員のKPIを明確にし、すり合わせ双方が納得する最適解を決めましょう。
(KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績評価指標」です)
軸があることにより判断のふらつきが減り、プロジェクトがまとまるようになります。
そのためにも目標やミッションは明確である必要があります。
また「Plan(計画)・Do(実行)」の時点で効果が見込めそうな提案に絞ることで効果の出ない取り組みを減らすことができます。
失敗を防ぎやすくなり、結果的に全体像であるロードマップのブラッシュアップがうまくなります。
Check(評価)・Action(改善)
本格的に取り組みが進むと「とりあえずやってみる」の段階から「やってみてどうだったか」の検証する段階になります。
DXの成功のためには「Check(評価)・Action(改善)」に重点を置く必要があり、ここに追及する余力がなければなりません。
「Action(改善)」には、出ている効果によって「改善するA」と「止めるA」があります。
常に見切りをつける選択肢をもっておかなければPDCAを無駄に回し続けることになります。
打ち切る決断をするために「Check(評価)」をする人は「Plan(計画)」をする人とは人事評価に利害関係のない人にしましょう。
現場社員へのヒアリング
DXとは、働き方の改革、ビジネス自体の変革等事業における既存の価値観や枠組みを根底から変化させることです。
そのため、現場社員へ行うヒアリングは、その部署の業務を徹底的に解剖し、そのパーツたちをどう組み合わせてDX化すれば定量的にどれだけ工数を減らせるかということに集中して行います。
また、PDCAを回すには現場目線の改善が重要であり、社員のDXリテラシーを向上していかなければなりません。
ツール選定の基準とアプリケーションの実装
ツール選択には、ロードマップに設定されたゴール及び長期目標が手掛かりになります。
目指す働き方の変革や、組織として目指していく姿等、将来的な経営戦略を踏まえて、どのような拡張性が必要かを考えて選定しましょう。
ツールやアプリケーションの導入では「Plan(計画)・Do(実行)」の段階で、プロジェクトの意義と目的を明確にした判断軸により判断します。
「Check(評価)・Action(改善)」の段階では、導入したツールやアプリケーション等についてDXの効果を振り返るプロセスが必要です。
ツールやアプリケーションの導入効果の見積もりやアプリケーションの性能を見抜くDXリテラシーがあるとPDCAによる良い改善効果を得ることができます。
「Check(評価)・Action(改善)」により現場社員の意見をヒアリングし現場の業務フローに寄り添いながらUIとUXを高めてシステムを進化させ続けなければなりません。
(UIとは、User Interfaceの略であり「ユーザーとプロダクトをつなぐ接点」を意味します)
(UXとは、User Experienceの略であり「プロダクトやサービスを通じて得られるすべてのユーザー体験」を意味します)
読んだ感想
DXの成功体験だけではない失敗体験も含んだ話を知ることができるため本書の内容は大変価値があるものだと感じます。
本書を読んで、DXの成功のためには組織のトップの強力なリーダーシップ、明確な目標や判断軸の設定の重要性がよくわかりました。
組織のトップがDXで目指すべき姿をしっかりと描きリーダーシップを発揮することが、DXを成功に導く一番の大きな力であると思います。
2020年末に総務省が自治体に向けて公表した「自治体DX推進計画」というものがあります。
2021年に全国の自治体を対象としたアンケート調査では、DXへの取り組みが先行している自治体には「トップが主導している」という共通点があったそうです。
本書を読むことにより得られる知識は、DXに関わるすべての人が失敗を回避してDXを進めることに大きく役立ちます。
DXに挑戦する組織のトップの人には「DXの遂行には強いリーダーシップが発揮されることが求められる」ということを本書を読んで知って欲しいと思います。