イントロダクション
タイトル | : | きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」 |
発行日 | : | 電子版発行日 2023年10月31日 Ver. 1.0 |
発行所 | : | 東洋経済新報社 |
著者 | : | 田内 学 |
著者情報は、上記リンクからご確認ください。 |
優斗の運命を動かしたのは、ある意味、彼自身のお金への執着だったと言える。
進路指導の面談で、将来の職業の話になり、うかつな一言を発してしまった。
「年収の高い仕事がいいです」
担任の使命感に火がついた。
「お金よりも大事なものがあるだろ」
「社会のために自分に何ができるのかを考えろ」
優斗はキレイごとだけ言う大人が大の苦手だった。
教室から出ると、廊下の窓越しに、不気味な黒い雲が迫っているのが見えた。
彼女と出会ったのは、あの屋敷にさしかかったときだった。
「あの屋敷」とは、錬金術師が住んでいると噂される謎めいた屋敷。
「ねえ。ちょっと、いいかな?」
──バケツをひっくり返したような雨がおそってきた。
周りの景色が一変する。
「早く! こっち!」
彼女に続いて、優斗も洋館の中に体をすべり込ませた。
オススメしたい人
- これから投資を考えている人
- お金でたいていの問題を解決できると思っている人
- お金を貯めて将来に備えたいと思っている人
- 働くとはお金を稼ぐことだと思っている人
学べること
本書は、大人も子どもも知っておきたい経済教養小説です。
私たちにとって、お金は必要不可欠な道具です。
それはきわめて便利な道具ですが、時としてさまざまな問題を生み出します。
本来は道具であるはずのお金に縛られ、人生の選択がお金中心になってしまうこともあります。
お金中心の人生を歩むこと、それは、お金の奴隷です。
本書は、お金について新たな視点を与えてくれます。
ぜひ、物語の進行とともにお金という鎖から解放されていくことを実感してください。
きっと、読み終えたときには、愛することや未来への考え方が変わっていることでしょう。
キャラクター
佐久間 優斗(さくま ゆうと)
推理小説にハマっている中学2年生。
部活はサッカー部に所属している。
両親はトンカツ屋を営んでいる。店名は「トンカツさくま」。
大学受験を控えた兄がいる。
とある理由から七海と一緒にボスから話を聞くことになる。
久能 七海(くのう ななみ)
肩まである茶髪の、すらりとした若い女性。
アメリカの投資銀行の東京支店で働いている。
気の強そうな話し方から、周りを強気に説き伏せている仕事ぶりが容易に想像できる。
上司のフィリップからボスのところで勉強するように言われ、新幹線と電車を乗り継いで2時間以上かけて通う。
投資でどうやってもうけるのかを学びにきた。
ボス
投資で莫大な富を築き、お金を簡単に増やしてしまうことから錬金術師と呼ばれる初老の男性。
とある理由から、優斗と七海に「お金」について教える。
ストーリー
佐久間優斗は、偶然出会った久能七海とともに錬金術師が住むと噂される洋館を訪れます。
その洋館でボスと呼ばれる初老の男性からお金について学ぶことになります。
ボスは2人に話します。
「多くの人がお金のために働き、お金に感謝する。
年収が高ければえらいと思い、貯金が多ければ幸せやと感じる。
生活を支えるのはお金やと勘違いして、いつしかお金の奴隷に成り下がるんや」
ボスが2人に話すのは、お金の正体。
お金の正体とは、3つの真実。
一、お金自体には価値がない。
二、お金で解決できる問題はない。
三、みんなでお金を貯めても意味がない
提示された3つの真実を聞いて優斗と七海は反論します。
「明らかにお金には価値があります」
「お金で解決できない問題もありますが、多くの問題はお金で解決します」
「お金を貯めることは、将来に備えるためには必要なことです」
それは、優斗と七海にはまったく理解できない「謎」でした。
「その3つの謎を解明すれば、お金の正体が見えてくる。
お金の奴隷から解放されるんや。
その上で、この建物の本当の価値がわかる人には、この屋敷ごとあげていいと思っているんや」
お金の正体も気になったし、お金の奴隷にもなりたくない。
ボスの言葉を聞いた優斗はそう思いました。
優斗と七海は、ボスの話に耳を傾けます。
そして、ボスが語り終えたとき、2人はお金の正体を知り、屋敷の本当の価値に気づきます。
物語の最後では、ボスから2人に驚きの事実が告げられます。
これは、お金と愛の見え方が変わる物語です。
読んだ感想
私は、本記事の上部にあるリンク先ページで、出版社からの本書の紹介を見てみました。
すると、次の問いが書かれていました。
お金を貯めても意味がない
▶あなたはその理由が答えられますか?
この問いに私は答えることができませんでした。
「お金=幸せ」ではないけれど、お金はたくさんあったほうが絶対いいはずです。
意味がないとはどういうことなのでしょうか。
この本は、私にお金についての新しい視点を与えてくれるものだ。
そう感じて私は本書を手にすることにしました。
本書は、表紙に書いてあるとおり「経済教養小説」です。
その名のとおり、経済についての解説と小説としての面白さがしっかり両立されています。
本書を読み始めると、まず「お金を簡単に増やしてしまう」という錬金術に興味を引かれます。
物語の先を知りたくてページをめくるのが楽しみになってきます。
ボスが登場すると、今度はボスが話す「お金の正体」が気になります。
そして「お金の奴隷」になりたくないという気持ちにもなります。
ボスの話を聞き終わると、主人公の優斗くんはお金の謎を解明するために思考を始めます。
その思考する過程を一緒に体験することで、読者の頭の中の整理が促されます。
頭の中の整理が終わり、自分の中の答えが見つかると、今度は答え合わせがしたくなります。
また先が知りたくなって読み進めていきます。
すると、この物語で登場する謎は、お金の謎だけではないことがわかってきます。
物語としての謎も用意されているので、小説としてのおもしろさも十分にあってのめり込んでしまいます。
お金のことを知りたい気持ちと物語の展開が気になる気持ち、2つの気持ちの相乗効果で本を読み進めるスピードは加速していきます。
冗長な内容がなく、読者を飽きさせないのもすごく良いです。
そのため、本書を一気に読み切ってしまう人もいると思います。
しかし、私がオススメする本書の読み方は違います。
私のオススメは、ボスから出された謎の1つ1つに対し、主人公の優斗くんがそうしたように自分なりの答えを出そうと考えるための時間を取りながら読むことです。
自分が出した答えが正解でも間違いでも必ず何らかの形で学びに繋がると思うからです。
私はまとまった時間を取れずに細切れの時間を使って読むしかなかったので、意図してそういう読み方をしたわけではありませんが、その方が楽しく読めるし学べる気がしています。
本書を読んでいると、ボスの話の途中で反論したい気持ちが生まれることがあると思います。
そのままではモヤモヤしてしまいますが、だけど大丈夫です。
安心してください。
読者が持つであろう反論や疑問は、だいたいのことは優斗くんか七海さんが代弁してくれます。
お金に対して誰もが感じていることや疑問に思うことは、優斗くんが感情豊かにストレートにボスにぶつけてくれます。
お金について少し知識がある人が感じる疑問は、七海さんが簡潔で的確な言葉でボスに質問してくれます。
それを可能にするために年齢や立場が違う2人の男女が登場人物として採用されているのかもしれません。
そして、ボスは私たちみんなの疑問に見事に応えてくれるのです。
本書は、小説であり物語であることから心で感じるものがあります。
そのため、本書から学べることは、単なる教科書的な内容を使って知識として学ぶこととは異なります。
小説を読むことで、作中の人物の人生を知り、思いを知り、湧き上がる感情とともに脳に刻まれた内容は忘れ難いものになるはずです。
きっと、あなたが本書を読み終わった後、1つ1つの行動が社会に影響して未来に繋がっていることを感じ取ることでしょう。
「きみのお金は誰のため」
本書を読んでお金の正体が見えると、このタイトルの意味がわかります。
それがわかると、お金の奴隷から解放されることができます。
素晴らしい内容なので、ぜひ多くの人に読んで欲しいです。
ギフトとしてもオススメです。