イントロダクション
タイトル | : | 脳と身体を最適化せよ! 「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法 |
発行日 | : | 2024年2月13日 プリント版第1刷発行 2024年2月13日 電子版発行 |
発行所 | : | ダイヤモンド社 |
著者 | : | モリー・マルーフ |
著者情報は、上記リンクからご確認ください。 |
「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」ーーこれは、誰もが欲しいものだと思います。
これらを実現するための科学的健康法。
しかも、スタンフォード大学の超人気講義の内容です。

これは、気になります!
そう思い、本書を手にすることにしました。
オススメしたい人
- 人生の最後まで活動的に過ごしたい人
- 年齢を重ねても明晰な頭脳と疲れない肉体を保ちたい人
- 老化を抑制したい人
- 逆境に直面したときにうまく適応できるようになりたい人
学べること
本書では、世界の主流となっている科学的健康法「バイオハック」について学ぶことができます。
この「バイオハック」は、億万長者や起業家、アカデミー賞俳優も注目している最新の健康法です。
そう聞くと、「お金持ちしか実践できない方法なのでは?」と思ってしまいますが、そんなことはありません。
本書には「バイオハック」を「誰でもすぐにできる方法」が豊富に掲載されています。

つまり、誰でも「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現できる!
ここでは、本書の内容であるバイオハック戦略の一部について、私の解釈で簡単にまとめています。
「バイオハック」は、健康に関することなので必ず本書を読み理解したうえで実践してください。
また、本書は次の内容に留意して読み進める必要があります。
*本書には、健康管理に関する助言や情報が含まれています。本書の内容は、かかりつけ医やその他の訓練を受けた医療専門家による助言に代わるものではなく、それを補完するために使用されるべきです。健康上の問題があるとわかっている場合、もしくはその疑いがある場合は、医療プログラムや治療に取りかかる前に、かかりつけ医に相談することをお勧めします。本書で提案されている方法を用いたことによって発生し得るあらゆる結果について、出版社と著者・翻訳者はいっさいの責任を負いません。
『脳と身体を最適化せよ!』より
脳と身体のバイオハック
ミトコンドリアは、細胞の発電所の役割を果たす細胞内器官です。
つまり、ミトコンドリアは電荷を蓄えるバッテリーなのです。
バッテリー容量が損なわれると、元気を保つために使えるエネルギーが減ることになります。
そうなれば健康も損なわれてしまいます。
「健康を増進したい」、「もっと長生きしたい」、「健康寿命を延ばしたい」と願うなら何を目標にするべきかは単純明快です。
ミトコンドリア機能を最適化してエネルギー容量を増強すれば良いのです。
脳と身体のバイオハックとは、結局はミトコンドリアのバイオハックなのです。
ミトコンドリアは環境への感受性が高いため、ハックするのは比較的容易です。
ミトコンドリアとは
ミトコンドリアは、人間の小器官であり人間の細胞内に存在します。
しかし、ミトコンドリアは人間の一部ではありません。
遺伝的には細胞核以外の遺伝子を持っており、独自のDNAを有しています。
ミトコンドリアは、数十億年前、宿主細胞に吸収された真正細菌の子孫です。
細胞内に取り込まれた細菌が宿主細胞と共生関係を築き、現代のミトコンドリアに進化しました。
ミトコンドリアは人類の進化に重要な役割を果たしたと考えられています。
ミトコンドリアの働き
ミトコンドリアが体内に生息し、あなたのためにどんな働きをしているのか?
それを知れば、ミトコンドリアを最適化する方法を理解しやすくなります。
ミトコンドリアの役割
- エネルギー生産
動物や植物を食べることによってエネルギーを取り込み、エネルギー(ATP)を生成。 - ATP供給
生成されたATPは細胞内でエネルギー伝達や駆動に使用。 - 細胞代謝
代謝プロセスにおいて中心的な役割を果たし、細胞の生存に必要なエネルギーを提供。

ちなみに「代謝」というのは、次のことをいうそうです。
- 細胞の再生(修復)
- 免疫力の維持、向上
- 有害物の解毒(排出)
- エネルギーの産生
ATP(アデノシン三リン酸)
細胞内でミトコンドリアがつくるエネルギーの形態です。
ミトコンドリアによって産生、貯蔵、消費されるエネルギー通貨です。

本書では、専門用語を使った説明がありますが、巻末に用語集がついているので安心です。
健康とは「逆境への適応能力」である
「バイオハック」について学んでいるところですが、そもそも健康とは何でしょうか?
著者は、健康の定義を「逆境への適応能力」としています。
健康の定義は、「逆境への適応能力」です。
人生では絶えず難題にぶつかります。
それらへの対処と適応の仕方こそが、健康の真の指標です。
主要なストレッサーを処理する能力と、すぐに立ち直り元気を保つためのリソースを整える能力によって測られます。
積極的に健康増進に取り組む大局的なメリットは、3つあります。
バイオハックで実現する3つのメリット
- ケガや病気のリスクが下がり、確実に体調が整う
- 人生の目的を達成するための能力と力量が手に入る
- 生活の質が高まる
健康は、人生の目標を達成するための手段です。
脳と身体を整えることにより、頭にモヤがかかった状態を脱し素晴らしい気分を味わうことができるでしょう。
習慣がミトコンドリアに与える影響
現代人の生活様式は、遺伝的適応に真っ向から反しています。
私たちの生活は、エネルギー産生を直接阻害し、生活の質を低下させ、寿命を縮めてしまいます。
ミトコンドリア機能不全の影響
エネルギー産生が最適でない生活は、ミトコンドリア機能不全を引き起こします。
ミトコンドリア機能不全が起きると、次のデメリットがあります。
- エネルギー不足
細胞内でのエネルギー生産が低下し、全身のエネルギー供給が不足する。 - 炎症の促進
細胞内で炎症応答を引き起こし、慢性的な炎症が発生しやすくなる。 - 早期老化のリスク増加
エネルギー容量不足と炎症が組み合わさり、細胞や組織の老化が促進され、早期老化のリスクが増加する。 - 慢性疾患の可能性
慢性疾患のリスクを増加させ、健康に不利な影響を与える可能性がある。
ミトコンドリアは、あなたの習慣に敏感に反応する健康のパートナーです。
環境に応じて成長したり、増殖したり、死に絶えたりします。

質の低い生活が、より生活の低下を招く。
これでは悪循環ですね。
ミトコンドリア機能を低下させる主な行動パターン
ミトコンドリア機能を低下させる主な行動パターンは、次の3つです。
- 運動不足ーー座りっぱなしはNG
- 食べ過ぎーー肥満が炎症を引き起こす
- 回復なき慢性ストレスーー飲酒や食べ過ぎの連鎖
ミトコンドリアを損傷させるライフスタイルの深刻さを理解している人は少ないです。
利用可能エネルギー不足の基準値である50%を超えてエネルギー容量が低下すると疾患が現れるとされています。
ミトコンドリア機能を向上させる健康習慣
エネルギー容量の50%を上回り保つために、できることがあります。
ミトコンドリア機能を向上させる健康習慣は、次の5つです。
- 禁煙する
- 健康な食生活を心がけるーー老廃物を排出する
- 運動するーーミトコンドリアの数を増やす
- 健康的な体重を維持するーー肥満がミトコンドリアを損傷させる
- アルコール摂取量を最小限に抑えるーー肝臓を弱らせない
習慣化できるか否かで、ミトコンドリアの機能が向上するか低下するかが決まります。
この5つの健康習慣は、心血管疾患やガンによる死亡確率を低下させ、余命を引き延ばすことができます。
「エネルギー枯渇」の自己評価
エネルギー容量を増やすためには、毎日健康づくりをする必要があります。
そのために、まずは今のエネルギーレベルの率直な自己評価から始めましょう。
エネルギー容量が不十分であるサインには次のようなものがあります。
当てはまるものをチェックしてみましょう。
エネルギー容量が不十分なときのサイン
- 1日が終わる前にエネルギー切れを起こす
- 朝、頭がぼんやりする(目覚ましのアラームなしに起きられない)
- 睡眠不足
- 気分が不安定になりがち
- 集中できない
- 常に何か食べていないと気がすまない
- 良質な人間関係の欠如
- スタミナ・持久力・体力の低下
- 柔軟性と骨強度の低下
- 感覚の鈍化
- 肌の不調
- 内臓脂肪
- 髪や爪の傷み
このリストの複数の項目にチェック入った場合は、エネルギー容量不足です。
その原因はライフスタイルにある可能性がかなり高いです。
エネルギー容量を増やすバイオハック戦略
エネルギー容量を減らす基本要素と、エネルギー容量を増やす基本要素があります。
自分が現在どのような状態にあるのか考えてみましょう。
エネルギー容量を減らす基本要素
エネルギー容量を減らす基本要素は、次の4つです。
エネルギー容量を減らす要素
- 運動不足
- 慢性炎症を引き起こす食べ過ぎと栄養不足
- ストレス過多
- 社会的断絶
エネルギー容量を増やす基本要素
エネルギー容量を増やす基本要素は、次の4つです。
- 運動と回復によって、細胞のバッテリーを増やす
- 適切な食べ物を適切な時間に適量食べる
- 十分な睡眠、瞑想、自然に触れることでストレスを管理する
- 人との触れ合いとつながりを持つ
バイオハック戦略
本書で紹介される「バイオハック戦略」とは、次のことを実践していくものです。
- エネルギー容量を減らす問題を克服する
- エネルギー容量を増やす習慣を身につける
これらを実践できれば、エネルギー産生を最大限に増やして健康寿命を延ばすことができます。
運動こそ最も安上がりで、最も効果的なバイオハック
運動は、心身の健康のために自分でできる最も効果的な対策の1つです。
- 運動はミトコンドリアのエネルギー産生量を高める
- 運動は脳機能を向上させ、記憶力、認知力を高める
- 運動には老化を抑制する効果がある
運動は、ミトコンドリアのエネルギー産生量を高めてくれます。
筋肉にはミトコンドリアが豊富に存在しています。
運動は、筋肉を強化することができます。
そして、全身(特に心臓・肺・脳といった重要臓器内)のミトコンドリアの数と機能を増強します。
運動は、オートファージとマイトファージを活性化します。

オートファージは、死んだ細胞の除去です。
マイトファージは、損傷したミトコンドリアの除去です。
これによって、老廃物が排出され、新しいスペースがつくられます。

マウスを使った実験では、ミトコンドリア生成によって、マウスのシワは消え、毛も再び生え始めるといった劇的な若返り効果があったそうです。
自然老化には、実際はまったく自然ではない側面も多く存在します。
それらは確実にハックすることができます。
ミトコンドリアを鍛えるには運動しかない!
ミトコンドリアの健康を強化する最も効果的な方法は、運動です。
もし、あなたが運動初心者なら、簡単な運動から始めましょう。
そして、少しずつ運動量を増やしていきましょう。
ウォーキング、ジョギング、腹筋運動、腕立て伏せ等、運動能力に関わらず何かしらできることはあるはずです。
ほぼ毎日30分間運動してみましょう。
ミトコンドリアは、その運動に見合うだけのエネルギー産生量を増やします。
米国政府の身体運動ガイドラインでは、次のことを推奨しています。
『脳と身体を最適化せよ! Chapter5 運動--最も効果的な最適化法』より
- 一日を通してもっと身体を動かし、座っている時間を減らす。ガイドラインによれば、少しの身体活動であっても、まったくしないよりは絶対にいい。
- 十分な健康効果を得るには、成人の場合、週に最低150分(2時間30分)から300分(5時間)の中強度の有酸素性身体活動、または週に75分(1時間15分)から150分(2時間30分)の高強度の有酸素性身体活動をすべきであり、1週間を通して強度が異なる運動を組み合わせるのが望ましい。
- さらに健康効果を高めるには、週に2日以上、すべての主要筋肉群を使う中強度以上の筋力向上活動を行うのが望ましい。
脳と身体を最適化し、慢性疾患を予防し、老化に伴う虚弱状態を回避したいのなら、何としてでも運動すべきです。
体内のエネルギーを回復する
体内のミトコンドリアは、私たちが口にする食べ物を使えるエネルギーに変換します。
そのため、食べ物の選択が重要なのは間違いありません。
健康的な食事は、主に野菜や果物、ナッツ類、種子類、豆類、全粒穀物などの食物繊維が豊富な植物性食品と、魚介類などの良質なタンパク質で構成されます。
しかし、「身体に良い食べ物」というのは、個々人によって異なります。
一部の人には非常に効果的ですが、それ以外の人には効かない食品です。
自分に合った食品を見つけるためには、多少の検証作業が必要になります。
一方で、すべての人に当てはまる普遍的な法則もあります。
超加工食品(ジャンクフード、ファストフード、包装食品)を絶つことを心がければ、健康を大幅に改善することができます。
また、本気で健康寿命を最大限に伸ばしたいのなら、その第一歩は無添加のホールフードを食べることです。

本書では、自分に合う食事法の見つけ方が詳細に書かれています。
ミトコンドリアのためのサプリメント
ミトコンドリアと代謝機能を正常に働かせるためには、十分な栄養素が必要です。
本書では、全体を通してサプリメントの活用を勧めています。

サプリメント選びは、種類がたくさんあり過ぎて難しいです。
サプリメントを安心して活用する方法
著者の診療では、2通りの用途でサプリメントを使っています。
- 最も一般的な不足栄養素を補うために処方する基本サプリメントのセット
ビタミンD、マグネシウム、ビタミンB群、ミネラル群が含まれる。 - さまざまな体内システムを最適化するため患者一人ひとりに合わせたより個別的なもの
必ず腸の健康から着手する。
基本サプリメントのセットには、ビタミンD、マグネシウム、ビタミンB群、ミネラル群が含まれます。
また、腸の健康から着手することは、腸の機能不全があると栄養素を吸収できずホルモン異常が生じる場合が多いからです。
また、超機能不全は免疫力低下にもつながります。
重要ポイント:すべてのサプリメントを一度に使用しないこと!
多量のサプリメントを一度に摂取すると相互作用により、効果が出るのに時間がかかります。
3~6カ月間、特定の改善すべき部分に集中してから、次の最適化にとりかかるようにしましょう。

具体的なサプリメントの内容は、ブランドや製造元によって異なります。
専門家のアドバイスを受けるのが良いでしょう。
ミトコンドリアのためのサプリメント
本書で紹介される推奨のサプリメントには、次のものがあります。
- 抗炎症作用ーービタミンDやオメガ3脂肪酸
- 疲労対策ーーマグネシウムやコエンザイムQ10など
- 電解質ーー水にヒマラヤ岩塩を加える
- 肺機能向上ーービタミンCなど
- 血栓予防ーーナットウキナーゼなど
- 脳の健康ーーライオンのたてがみ
- デトックスーーブロッコリースプラウトや水のろ過など
自分に最適な処方を組み立てられるよう、機能性医学専門医に相談することをお勧めします。
読んだ感想
私たちの健康のためには、ミトコンドリアを大切にしなければなりません。
ミトコンドリアの存在が何かを知って、健康に対する考え方が少し変わったと思います。
しかし、必要なことは以前からよく言われてきた「良い運動」「良い食事」「良い睡眠」です。
本書では、ミトコンドリアを軸とした視点で科学的にこれらが良い理由を学ぶことができます。

健康に関する本を読むと不思議と「健康になりたい!」という気持ちが強くなってやる気が出ます。
とは言え、実践が難しいことは変わりません。
「エネルギー容量が不十分なときのサイン」のリストでは、私はほとんどの項目にチェックが入ってしまう結果になりました。
また、「座りっぱなしがダメ」と言われても仕事のためには長時間座らなければなりません。
本書では、エネルギーを蓄える容量を増やすためには運動が良いと言います。

しかし、その運動に使うエネルギーがないのだが?
と、私は思いました。
しかし、本書にはその対処が書かれています。
あなたは今いる場所からスタートして、正しい方向に向かって力を尽くすしかない。
『脳と身体を最適化せよ! Chapter1 なぜ「脳と身体の最適化」が必要なのか?』より
ということで、ウラ技的なことは無く、結局はやるしかないのです。
「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」は、易々とは手に入らないようです。
それでも本書では何処をピンポイントで頑張れば良いかを学ぶことができます。
知らないよりは知っていた方が確実に実践しやすくなるのは間違いなく、読者の益になります。
心がけ次第で良い方向に変われることもあるはずです。
本書で説明される健康の定義では、健康に大切なのはレジリエンス(柔軟な回復力)です。
ストレスは、適度なものであればミトコンドリアを最適化します。
ホルミシス
軽度のストレスが有益な生物学的反応を生み出すことです。
適度なストレスにより、エネルギー産生を増やす必要があるという信号がミトコンドリアに贈られます。
ストレスには様々なものがあります。
その中で一番厄介なのは精神にかかるストレスだと私は思っています。
その内容については、本書には詳細な説明が掲載されています。
本記事では省きましたが、精神状態を整える方法については、次の記事も参考になると思います。
「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を手に入れることは、難しいことです。
しかし、それには代えられない価値があります。
健康であればあるほど、人生を最高のものにしていけるはずです。
本書の知識を使って、それを実現しましょう。