イントロダクション
タイトル | : | プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑 性格・人物編 |
発行日 | : | 2024年2月1日 発行 |
発行所 | : | 日本文芸社 |
著者 | : | 秀島 迅 |
著者情報は、上記リンクからご確認ください。 |
書店でたまたま目についた本書。
私は小説の書き方等を学んだことも書いたこともありません。
しかし、いつか物語を創作してみたいということに憧れを持っています。
タイトルには、「プロの小説家が教える」とあります。
そして、商品紹介ページを確認すると「すべての創作活動で役に立つ言葉の教科書」と書かれています。
これは、とても面白そう!
本書を読めば、私でも物語をつくれる?
そう思い、本書を手にすることにしました。
オススメしたい人
- 小説・ライトノベル・マンガ・シナリオ等、創作活動を始めたいと一度でも思ったことがある人
- 性格・人物像の文章化の方法を学びたい人
- 頭でイメージするキャラクターを適切な語彙でしっかり読者に伝えたい人
学べること
ストーリーはステージ、キャラクターは生き物です。
個々の生き物はすべて異なり、ステージの上で踊ったり笑ったり泣いたり独自に活動します。
その活動を文字に綴って文章化、起承転結の展開を象れば、それが物語となります。
物語は空想上のものですが、読者は登場するキャラクターを実際に生存する人物として捉える傾向があります。
キャラクターは、読者が自己投影できるリアルな象徴なのです。
そのため、そこに嘘くささや矛盾を感じれば、興ざめして物語から心を離してしまいます。
さらに、物語を盛り上げ引き込むほどのキャラ特性を備えていなければなりません。
本書では、キャラクターたちを魅力的に描くためのノウハウとテクニックを学ぶことができます。
ここでは、本書の内容の一部である物語創作で重要なキャラクターの性格描写の基礎について、私の解釈で簡単にまとめています。
キャラクターとストーリーの関係
物語のキャラクターとストーリーは密接に結びつくものであり、次の5つの関係があります。
- ストーリーの牽引者
キャラクターは、ストーリーを牽引する重要な要素です。
キャラクターの行動や決断が物語の進行を促進し、読者を引き込みます。 - 感情移入と共感
キャラクターが魅力的かつリアルに描かれることで読者は感情移入し共感します。 - テーマ性の具現化
キャラクターの性格や成長は、物語のテーマを具現化します。
主役級のキャラクターの経験は、物語が伝えたいメッセージを強調します。 - 展開と相互作用
キャラクターの性格や選択は、ストーリーの展開に影響を与えます。
その逆にストーリーでの出来事はキャラクターを変容させます。
このようにキャラクターと物語は相互に作用し物語を魅力的にします。 - 読者の関心維持
キャラクターが読者にとって興味深い存在であれば、物語全体に対する読者の関心が維持されます。
読者がキャラクターの動向に注目することでストーリーの展開に引き込むことができます。
総じて、キャラクターは物語の中心的な要素であり、ストーリーの展開に強い影響を与えます。
読者はキャラクターを通じて物語に参加し、物語は生命を帯びることになります。
キャラクターの性格から思考や行動の結果、物語が動くことを念頭に置きましょう。
以下ではキャラクターの描き方について説明します。
キャラクターの性格
キャラクターには、物語上の「役割」を与える必要があります。
キャラクターが物語の登場人物と成るために「役割」は不可欠なものです。
そして、キャラクターの性格は「役割」にジャストフィットするものを付与しなければなりません。
キャラクターの性格=物語上の存在意義
そのため、キャラクターの性格を読者にいかに伝えられるかが重要です。
キャラクターの性格を読者に伝えるうえで大事なポイントは2つです。
- できるだけ具体的な表現で、深掘りした内容を伝えること
- キャラクター同士の性格が被らないようにすること
キャラクターの性格を読者に伝えることが重要だからといって、冗長度の高いキャラクターの説明ばかりでも展開がなかなか前に進みません。
それでは読者に最後まで通読してもらえる可能性が低くなってしまうので注意しましょう。
また、キャラクターをより個性的に描くには次の3要素を意識しましょう。
- 感情
登場人物の人間性を示し喜怒哀楽を描くことで、読者は気持ちを同調させ、感情移入するようになります。 - 動き
態度からは人の着眼点や人生観が露わになり個性を表現することができます。 - 価値観
価値観はキャラクターの本性と密接に関係します。
そのうえ、主役級のキャラクターの価値観はストーリーのテーマとも深く関わります。
そのため、物語の核心を構成する要素として重要な役割を担います。
主役級のキャラクターの性格は、読者にきちんと届く描写を物語の序盤でクリアしておく必要があります。
主人公の性格的傾向等をしっかり伝えることでキャラクターの行動原理を裏づけることができます。
それができない場合、読者が主人公の言動に疑念と反感を抱き作品から心を離してしまうでしょう。
キャラクターを「生きる存在」として描く
物語の中でキャラクターを「生きる存在」として描かなければなりません。
「行動・心理・言葉」を三位一体で表現することが重要です。
「行動・心理・言葉」を三位一体で表現する
主要人物であればあるほど、「行動・心理・言葉」関連する要素を詳細に決定づける必要があります。
この作業は、読者に生き生きとしたキャラクターの人間味を伝えるための大切な作業です。
全キャラクターに対して要素を決定し、要素に肉付けしていくことで物語をアレンジしていきます。
また、それら要素は絡み合うものでブレてはいけません。
最初に設定した登場人物の性格がコロコロ変わってしまっては読者は困惑し、やがて読書を放棄してしまいます。
そのためキャラクターには一貫性を持たせましょう。
キャラクターに一貫性を持たせる
キャラクターの言動がブレることなく読者の期待に応えることによって書き手と読者の信頼関係を築くことができます。
しかし、それでは意外性を出すことができないと思う方もいるかもしれません。
ここで重要となるのは、一貫性と多面性は違うということです。
一貫すべき情報から外れたことは別側面として制限なく描くことができます。
キャラクターの多面性を引き出せば意外性と驚愕に満ちた大どんでん返しが可能です。
大別される4つのキャラの典型的行動
物語におけるキャラクターの役割にはテンプレートがあります。
もっともポピュラーな配役は、「主人公」「敵」「仲間」「協力者」に大別されます。
キャラクターの役割は、「主人公」「敵」「仲間」「協力者」に大別される
この役は、職場、学校などの現実の世界でも存在するため参考にすることができます。
誰がどの役になるか、まわりの人を対象に「対人行動の癖」を観察してみましょう。
攻撃行動、追従行動、援助行動、怒り方や笑い方、口癖、長所と短所などを捉えます。
物語に落とし込む際は、少し極端なくらいのアレンジを施すと面白味が増します。
また、どんなに魅力的な主役級キャラクターを登場させても、ひとりぼっちでは物語は面白くなりません。
人は、他者との関わりにより変化と成長を遂げます。
キャラクター同士の関係性が重要
キャラクターにお互いを引き立てるような属性を付与することで物語の面白さがアップします。
王道キャラクターの描写理論
王道キャラクターを書くための2大ポイントがあります。
- SAVE THE CAT の法則
- ゼロからのセオリー
「主人公の体験=読者の体験」という展開こそが、面白く魅力的な作品の仕上がりを約束します。
SAVE THE CAT の法則
これは、「ピンチに陥った猫を危機一髪のところで救うエピソードを序盤に入れよ」という法則です。
慈悲深くも勇敢なキャラクターとして即座に観客の感情移入のスイッチをオンにすることができます。
このように、読者が確実に感情移入できるような出来事に主人公を巻き込みましょう。
ゼロからのセオリー
物語の起点は、「喪失」や「亡失」です。
そして、物語の終点は、「獲得」や「克服」です。
どういうことかというと、たとえば「何もない」主人公が様々な苦難を乗り越えて最後に「大切な何か」を手にする過程を書くということです。
重要なのは、物語の起点と終点を見比べた際、キャラクター自身が大きな成長を遂げていくことです。
ストーリーとキャラクターは一心同体
読者は、キャラクターの喜怒哀楽に気持ちを同調させます。
ストーリーをキャラクターの心の動きにシンクロさせましょう。
ストーリーとキャラクターの心の動きをシンクロさせる
ストーリーの流れに応じてキャラクターの心情に動きを持たせれば、読者は共感し感情の振幅を伴い物語に没頭します。
個々のキャラクターの心情の変化を綿密に空想して執筆しましょう。
ストーリー、キャラクター、物語のテーマは密接に関連します。
ストーリーは、ポジティブ面とネガティブ面が交差し、ラストにはポジティブ面が勝つというテンプレートに沿うべきです。
悪役がいてこそヒーローが輝くようにポジティブとネガティヴの関係性を理解し、キャラクターの内面を動かし、ストーリーと物語のテーマを同調させることが重要です。
まとめ
キャラクターを描くための定石といえるいくつかの定番の技法があります。
しかし、創作とはゼロから1以上を生み出すものです。
すべてのキャラクターを定番通りに描こうとするとオリジナリティに欠けてしまいます。
創作のポイントは、キャラクターの成長です。
しかし、王道キャラクターの描写理論をすべての登場人物に当てはめれば良いという話ではありません。
物語のテーマを体現するのは、主人公です。
ストーリーとシンクロして成長するのは、基本的に主人公と主役級キャラクターのみと理解しましょう。
書き手は、キャラクターの役割分担を見極める必要があります。
物語におけるキャラクターの役割は、「主人公」「敵」「仲間」「協力者」に大別されます。
エンディングで成長を遂げてポジティブな変化をするのは主人公と最も信頼する仲間ひとり、または恋人役を含む2人に絞り込むべきです。
その方が物語のテーマがブレずにストレートな共感を読者に与えることができます。
その理由は、物語にはコントラストが大切だからです。
悪への手痛い代償を明確に描写するほど勝者である主人公たちが手にした栄光を鮮明に読者に印象づけることができます。
本当に伝えたいテーマを付与できる主役にだけにハッピーエンドを用意した方が読者の感情移入度を高めることができます。
読んだ感想
この記事の内容を読んで、それでも「キャラクターを描ける気がしない」と思った方もいると思います。
それは当然です。
この記事の内容は、あくまで本書掲載の基礎的な内容の要約であり、これだけでキャラクターを描けるようになるわけではありません。
でも、安心してください。
本書では、キャラクターの「性格の決め方」や「タイプ分けの手法」等が掲載されています。
また、「物語でよく登場するポジティブ・ネガティブな54種類の性格」を図鑑という形で掲載されています。
さらに、巻末には「書き込み式で人物像が出来上がっていく! クリエイターのためのキャラクター創作シート」が付いています。
とても豪華な内容です。
商品紹介のリンク先のページでは、サンプル画像で内容を見ることができます。
気になる方はチェックしてみてください。
ただ、この記事の内容を読んだだけでも創作意欲が湧き上がってこないでしょうか。
「鉄は熱いうちに打て」といいます。
「ストーリーが登場人物を動かすのではなく、キャラクターが展開を引っ張らないければ作品はおもしろくならない」そうです。
そんな大事なキャラクターの描き方は、創作活動を始める前にしっかり学んでおきたいものですね。
本書は、「性格・人物編」となっていて違う「○○編」もあるのかな?
・・・と思い探してみたらありました。
「○○編」という言葉は付いていませんので、ここでは勝手に「無印」と呼ばせていただきます。
「無印」のこちらの本が、ネットで話題沸騰!発売即重版の大ヒットだったそうです。
「無印」もいずれ読みたいと思います。
本記事でご紹介した本書「性格・人物編」の方が『語彙力図鑑』の新作です。
お間違えのないようご注意ください。
あなたの大切な創作活動のために『語彙力図鑑』を活用してみてはいかがでしょうか。
本書の「登場人物の性格や人物像を表現できる“語彙力”」が活かされるシーンは、物語の創作に限らないように感じます。
たとえば、次の本の内容と合わせて自身の成長に活用することもできると思います。