イントロダクション
本書は、伝説のお笑い講師と呼ばれる、漫才作家・吉本興業NSC講師である本多 正識さんの作品です。
お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる 48 の技術を知ることができます。
オススメしたい人
- 就職活動の面接等で質問に対し言葉が詰まってしまう人
- 会議等、限られた時間内で自分の考えをすぐに伝えられない人
- 人から話を振られた際にうまい言葉で返したい人
- お笑い芸人の頭の回転の速さや引き出しの多さに憧れがある人
学べること
お笑い芸人を見ていると、どんなことにも素早く面白く返すことができて頭の回転の速さに憧れるものがあります。
自分には到底無理だと思っていましたが、本書によれば、頭の回転の速さは後天的に身につけることができるそうです。
ここでは「ここぞ!」というタイミングで瞬時にうまいことを言える方法について、この本の中で紹介されているテクニックとトレーニングのいくつかを私の解釈で簡単にまとめました。
次の2つのカテゴリーに分けてご紹介していきたいと思います。
- 即座に反応する方法
- うまいことを言う方法
この本には、本当に納得のテクニックやトレーニング方法がたくさん掲載されています。
詳しく知りたい方は、是非買って読んでいただきたいと思います。
即座に反応する方法
議論の場で、反応の遅い人はおのずと話の輪から遠ざけられてしまいます。
話を振られた時に意味のあるなしかかわらず、まず反応するようにしましょう。
自然とリアクションできる頭をつくる
自然とリアクションできる頭をつくる方法は、雑誌やネットニュース等を読むときに「強制的にほめる」「強制的にツッコむ」です。
このトレーニングが身につくとあらゆる議論の席や会話に能動的に参加できるようになります。
さらに頭の回転の速さはほとんどの場合、情報量に比例します。
ネットニュースのジャンルで一番興味が無いジャンルを開いてみましょう。
自分がまったく興味が無かったことの中にこそ、思考のタネとなる自分の中に無い知識や考え方が眠っています。
色々な記事を見ることは、語彙力を上げる事にも役立つはずです。
言葉の数が多ければ、状況に合わせて言葉を選ぶことができるようになり、結果として頭の回転が速くなります。
自分のペースで考える
話を振られた際に、即座に反応しつつも焦らず自分のペースで考えるための時間を意図的につくる方法です。ポイントは3つ。
ポイント1 一息置いて、見切り発車を防ぐ
話出す前に必ず軽く呼吸を整えましょう(時間にして 0.5 ~ 1秒ほど)
ポイント2 話を復唱して時間をつくる
相手の話を復唱して時間をつくりましょう。そうすることで、頭の中で情報が整理されて、どんなことを言うのか決めやすくなります。焦らないことが大事です。
(例)
相手 「 ○○について、世間では✕✕というふうに言われていますが、Aさん(あなた)はどう思いますか?」 あなた 「そうですね。○○については世間では✕✕と言われていますが、私は(私も)□□だと思います。」
ポイント3 「イエス」・「ノー」・「どちらでもない」のスタンスを決める
考える時間が少ない時は、議論の内容に対して自分がどの立場なのか示すだけでも十分に議論に参加していると言えます。
理由がすぐに浮かばない時は、少し整理している旨を伝え、次に理由を聞かれるまでじっくり考えましょう。
大事なことは、意味のあるなしかかわらず「まず反応すること」です。
沈黙の時間を作らずコミュニケーションをとりながら考える時間をつくることができます。
返事をしながら考える
パッと話を振られて「……」と黙ってしまった経験はあるでしょうか?
そうなってしまう人は、1回で答えを出そうとしてしまいがちです。
大事なことは、答えをすぐに出すことではなく、会話を続けることです。
会話の中で正解を探していくようにしましょう。
そのため、ここで最適なプロセスは「反応する ⇒ 返答する ⇒ 考える」です。
(「反応する ⇒ 考える ⇒ 返答する」ではありません)
この思考プロセスのトレーニング方法として紹介されているのが、ニュース番組でアナウンサーの言葉と言葉の間に合いの手を入れていくというものです(きよし師匠流ツッコミトレーニング)
(例)
アナウンサー 「今日、国会で大きな動きがありました。」 きよし師匠 「どんな動き?」 アナウンサー 「衆議院の予算委員会で……」 きよし師匠 「なにがあったん?」
このトレーニングを続けることにより反射的に言葉を出せるようになります。
頭をアイドリング状態に保つ
芸人たちの頭の回転の速さは「すでに準備していたことを素早く表現する速さ」も含まれます。
適切なタイミングで素早く引き出しから取り出し表現するためには、状況判断できる力が必要です。
その方法は「頭をアイドリング状態にしておく」です。
やり方は、話を聞く時に頭の中で必ず「はい」と返事をします。
そのことによって、内容が気になるところで自然と反応できるようにようになります。
(例)
A 「今日は雨だね」 B 「はい」 A 「雨は嫌だよね」 B 「はい」 A 「傘も必要だし、靴も濡れるし」 B 「はい」 A 「こんな日は家にいたいよね」 B 「はい」 A 「じゃあ出かけようか」 B 「はい?」
予測するクセをつける
テレビを見ていて、お笑い芸人の反応が早いなぁと思ったことはありませんか?
相手の思うようなことを先回りして行動できる理由は、状況を「予測」しているからです。
予測は必ず「観察」から始まります。
相手の様子や性格、その場の雰囲気など、状況を把握してはじめて予測を立てる準備が整います。
この「予測する」トレーニング方法として「1、3、9の法則」というものがあり、
「1,3,9の法則」とは、ひとつのフリに対して、3つのボケを考えて、さらにボケのひとつひとつにツッコミを考えるというものです。
根気強く続けていると先が読む力が必ず身につきます。
2種類の「準備」を使い分ける
何事においても一番大事なことは「準備」です。
この準備には「専門性を高める準備」と「平均点を上げる準備」の2種類があります。
- 「専門性を高める準備」は、ひとつのことへの対策を徹底すること。
- 「平均点を上げる準備」は、多くのことに満遍なく対応できるように備えること。
頭の回転の速さに直結する圧倒的に大切なのは「平均点を上げる準備」であり、不測の事態に備えることができます。
そのために「ベスト」、「ベター」、「バッド」の3パターンを想定しておくことが大切です。
ベスト | 自分の 100% の答え。 |
ベター | 「ベスト」の次に良いと思った答え。 自分より先に意見を求められた人が、準備していた「ベスト」に被った場合等に使います。 |
バッド | 不足の事態に備える答え。 予想ができないためピンポイントで準備することができません。 不測の事態を無視するのではなく受け入れたうえで一言添えるという方法もあります。 (例)「今までがネタ振りでここからが本番です」 |
「考える」プロセスを後回しにする(直感に頼らない)
たまたま調子が良く頭の回転の速さを発揮できたとしても、再現性が低ければ意味がありません。
調子が良い状態というのは、自分の得意な内容について話している等、置かれている状況や相手の言う内容をほぼ完璧に理解できている状況です。
この状態では、状況の理解に必要な思考を省くことが可能となり、考えるよりも先に言葉を出すことができます。
つまり、この時の思考のプロセスは「反応する ⇒ 言葉が出る ⇒ 考える」となります。
対して、調子が悪い時の思考のプロセスは、置かれている状況や相手の言っていることを理解することに時間が必要になるため「反応する ⇒ 考える ⇒ 言葉が出る」となります。
調子が良い時と比べると「考える」と「言葉が出る」の順番が逆になります。
その対策として、調子が悪い時も「考える」というプロセスをあとに回すようにしましょう。
意図的に調子が良い時に近い状態を作り出します。次の3つがポイントです。
置かれている状況はどんな状況なのか理解する。
(例:友達と映画の話をしている)今の自分はボケとツッコミ、どちらの役か理解する。
(ボケ役なら話題提供、ツッコミ役なら話のまとめ)真面目な話かゆるい話か理解する。
(真面目なら真剣な情報、ゆるいなら柔らかい表情)
うまいことを言う方法
常識を起点に非常識をつくる
常識は、非常に大事です。しかし、常識だけではおもしろくなりません。
漫才やコントで笑いが起こるのは、想定を超えた意外なワードが出てくるからです。
ただし、常識を土台にして、観ている人が理解できる範囲に留めなければなりません。
(例)
母 | ごはんできたよー |
子 | あー、おなかすいたー。さぁ、食べよー! |
子 | ごちそうさまでした(-人-) |
母 | まだ一口も食べてないでしょ!あんたの嫌いなトマト入ってるからって! |
ご飯を食べる前の挨拶が「いただきます」で、食べ終わったら「ごちそうさま」という常識の土台があるからこそ、ツッコミができます。ここに常識という前提が無ければツッコミが発生しません。
【注意!】
私が作ってみた上記の会話の例は、あくまでツッコミが発生するパターンの例として見てください。
あと、私はトマト大好きです。トマト農家さん、いつもありがとうございます。
発想するときは論理的に考える
発想力とは、その場で頭を捻ってゼロから考える行き当たりばったりものではありません。
どんな状況でも同じように頭を働かせることができるよう論理的な考え方を身につけなければなりません。
発想力とは、論理的に考えることです。
トレーニングには「大喜利もどき」を行います。
これにより自分に合った答えの出し方を知ることができます。
私もやってみたいと思います。
お題:大きいもの
ステップ1 お題に合うものを書きだす
- 象
- 富士山
- 奈良の大仏
- 東京スカイツリー
- ピラミッド
ステップ2 書き出したものを変化させる
- 象 ⇒ 小さい象(大きさの変化)
- 富士山 ⇒ 虹色の富士山(色の変化)
- 奈良の大仏 ⇒ 走り姿の奈良の大仏(形の変化)
- 東京スカイツリー 柔らくユラユラする東京スカイツリー(硬さの変化)
- ピラミッド ⇒ スライムなピラミッド(硬さの変化)
ステップ3 自分の思考の特徴を活かして別のことも考えてみる
私の場合は思考の特徴が「硬さの変化」なので、色々な物の硬さを変えてみます。
- 柔らかいキーボード
- 柔らかいコップ
- 柔らかいスプーン
「ちょっ、このスプーン、プリンに押し負けるんだけど!」等、ツッコめるようになって、少し面白く変わった気がします。
何気ない単語や事柄を自分の得意な考え方で組み合わせたりひっくり返したりすることで自分らしい答えを出せるようになります。
経験を自分の引き出しとしてストックする
多才多趣味で教養人、なにを聞いても返せる人が人気というのはお笑いの世界だけではありません。
そもそも「引き出し」とは、何を意味するのでしょうか。それは、単純に考えれば知識量です。
ですが、引き出しに成り得る可能性が一番高いのは、経験です。
にも拘らず、誰しもがたくさんの引き出しを持っているわけではないのは、経験をただの「思い出」としてストックしているためです。
経験を引き出しにストックするためにはどうしたら良いのでしょうか。
そのためには、自分が知ったお得な情報等、相手が知りたそうな内容を盛り込みましょう。
これを意識して思い出を相手に興味を持ってもらえるネタとして、いつでもアウトプットできるように準備してストックしていきましょう。
読んだ感想
本書を読むと「1秒で答えをつくる力」 と一口に言っても、それは複数のテクニックを駆使した結果、成し得ることとわかります。
普段からのトレーニングによって培うテクニック、相手の話を聞いている時に使うテクニック、自分が話す時に使うテクニック等、場面によって様々なものがあり、中には相反することを求められるものもあります。
この本をこれから手にする人には、各レッスンごとに得られるテクニックは何なのか、そのテクニックはどんな時に使われるのかを意識しながら読むことをお勧めします。
内容は、人気のお笑い芸人が学んできたことであり、すべて習得するとなれば並大抵のことではないと思われます。
ですが、お笑いの世界で勝負するわけではなく仕事等で活かしていく分には心構えだけでも良い方向に変えていけそうな事も多く掲載されていると感じました。