イントロダクション
タイトル | : | THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める 「後悔」には力がある |
発行日 | : | 2023年12月4日 第1刷発行 |
発行所 | : | かんき出版 |
著者 | : | ダニエル・ピンク |
著者情報は、上記リンクからご確認ください。 |
年末年始のお休み中、食べ過ぎました。
後悔しかありません。
この後悔を力に変えて、私は前に進みたいと思います。
そう思い、本書を手にすることにしました。
オススメしたい人
- 後悔することが多い人
- 後悔することが少ない人
- 後悔への向き合い方を知りたい人
- 後悔せずに生きたいと思っている人
学べること
後悔は、うしろ向きの発想と不愉快な感情を生み、よい人生を生きることの妨げにしかならないように思われがちです。
本書では、そんな後悔という感情について光を当て、後悔の強力なパワーを活用して好ましい変化を起こす方法を学ぶことができます。
ここでは、本書の内容について、私の解釈で簡単にまとめています。
※後悔が強力な感情であることは、多くの人がご存じだと思います。
後悔の力を活かす方法は、本書を読んで詳細な後悔の構造や性質をしっかり理解したうえで実践することをオススメします。
食べ過ぎたことの後悔のパワーを使って、好ましい変化を起こしていきます。
「後悔」という感情の正体
私たちが「後悔」と呼んでいる感情とは、何なのでしょうか?
それを定義することは、非常に難しいです。
後悔という感情は、ひとつの状態ではなくプロセスとして考えるべきものだからです。
「タイムトラベル」と「ストーリーテリング」
人が後悔を感じるプロセスは、人間の精神だけに備わっている二種類の能力とともに始まります。
- タイムトラベルの能力:脳内で過去と未来を訪ねる能力
- ストーリーテリングの能力:実際に起きていないことをストーリーとして語る能力
後悔のプロセスは、この人間だけがもっている2つの「超能力」が牽引します。
しかし、そのプロセスが完成するためには、さらに2つのステップを経なければなりません。
それが、後悔と他のネガティブな感情の違うところです。
- 比較するステップ
タイムマシンに乗って過去に戻り、「別の行動をとった場合の結果」と「現在の悲惨な状況」を比較します。
- その状況が誰の責任なのか分析するステップ
人は、たいてい自分がコントロールできる状況に関することで後悔をいだきます。
このように複雑なプロセスによって後悔という感情が生まれているように思えます。
しかし、実際にはほとんど意識することなく、このプロセスは実行されます。
つまり、後悔を感じることは、人間の本質の一部なのです。
「せめてもの幸いは……」と「もし~~していれば……」
私たちは、2つの超能力によって「仮実仮想」を実践することができます。
この思考と感情が交差する領域で創造力を働かせ、新しいものをつくり出すことができます。
つまり、「~~だったかもしれない」を想像することが可能なのです。
そして、この「仮実仮想」には2つのパターンがあります。
- 下方の反実仮想
実際よりもっとひどい結果になっていた可能性を思い描きます。
その結果、「せめてもの幸いは……」という意識になりやすくなります。
- 上方の反実仮想
実際よりもっとよい結果になっていた可能性を思い描きます。
その結果、「もし~~していれば……」という意識になりやすくなります。
私たちは、「せめてもの幸いは……」と考えるより「もし~~していれば……」と思うケースの方が多いです。
その理由は、生き延びるために人間の脳と精神は、そのような性質が備わっているからです。
「もし~~していれば……」と思考することは、のちの人生をよりよいものにできる可能性があるのです。
後悔という感情の役割は、まさしく人を気落ちさせることにあります。
だからこそ将来好ましい行動を取る後押しがされるのです。
私たちは、後悔の力を理解することにより、意思決定の質を改善し、パフォーマンスを向上し、人生の充実感を高めることができます。
問題は、後悔の力をよい方向に扱えない場合が少なくないことです。
私たちがいだく4つの主要な後悔
人間の後悔は、深層レベルでは4つのカテゴリーに分類することができます。
- 基盤に関わる後悔
- 勇気に関わる後悔
- 道徳に関わる後悔
- つながりに関わる後悔
基盤に関わる後悔
基盤に関わる後悔は、責任感ある行動、まじめな行動、注意深い行動を取らなかったことに関わるものです。
先見の明を欠き、現在の価値を過大評価し、将来の価値を過小評価した意思決定により、人生の土台にほころびが生じ、望むような未来を迎えられなくなったとき、私たちは後悔をいだきます。
ひとつひとつの判断ミスは、時間をかけて少しずつ積み重なり、あるとき、巨大な破壊力を生みます。
勇気に関わる後悔
勇気に関わる後悔は、思い切った行動を取らなかったことを後悔するというものです。
私たちを苛むのは、「行動しなかった」という事実です。
チャンスを活かすことができなかった後悔は、いつまでも心残りであり続けます。
道徳に関わる後悔
たいていの人は、よい人間でありたいと思っています。
ですが、現実では道徳的に好ましくない誘惑に駆られる状況は少なくありません。
「道徳に関わる後悔」は、善良とは言えない振る舞いをしたことによって生じ、その人の精神を長く痛めつけます。
つながりに関わる後悔
私たちの人生は、自分自身の行動によって方向づけられるものです。
しかし、生きる目的を生み出すのはほかの人たちです。
大切にするべき人たちとの良い関係を築けずに終わったりすることの後悔は、のちのちまで喪失感をいだき続けます。
私にとって、食べ過ぎは…「基盤に関わる後悔」でしょうか。
時間をかけて積み重なり、あるとき(体重計にのったとき)、巨大な破壊力を生みます。
人によっては、「道徳に関わる後悔」と感じるかもしれません。
過去の行動の取り消しと「せめてもの幸い」思考
思考が行動のためにあるとすれば、感情はその思考の助けになります。
感情にどっぷりつかっては絶望に襲われますが、私たちは感情からただ逃げるべきではありません。
後悔は、私たちをよりよい人間にする役割があります。
それでは、私たちは、どのように後悔を変容させることで、満足した人生を送ればいいでしょうか。
出発点は、「行動したことへの後悔」と「行動しなかったことへの後悔」の違いを認識することです。
- 行動したことへの後悔
具体的な出来事によって生じる場合が多く、強烈な感情が伴います。
そのため、すぐに対処したくなります。
- 行動しなかったことへの後悔
漠然としていて強烈な感情を引き出せない場合が多いです。
また、その性質上、修正することは難しいです。
後悔に関して、まずは現在の状況を改善することを目指します。
そのための方法は2つあります。
- 悔やまれる状況を取り消す
- 現在の状況に対する自己評価を高める
これらの方法は、将来の行動の改善につながるものではないかもしれません。
しかし、いま立ち直るために役立つものです。
食べ過ぎの後悔は、行動したことへの後悔ですね。
ステップ1 過去の行動を取り消す
このステップは、現在の状況を改善するためのものです。
行動したことへの後悔を是正したい場合、自分に次のように問いかけましょう。
- 誰かを傷つけてしまった場合
「謝罪や、そのほかの形で感情的、物質的な埋め合わせをすることで状況を改善できるか?」
- 自分自身を傷つけてしまった場合
「その過ちを是正できるか?」
取り消すことができる場合は、それを試みればいいでしょう。
一方、取り消すことができない場合、次のステップの方法を取りましょう。
食べ過ぎたことは、すぐには取り消すことはできません。
しかし、運動することで是正できるかもしれません。
ステップ2 「せめてもの幸い」思考を実践する
このステップは、過去の行動に対する見方を変えるというものです。
「もし~~していれば……」という発想を「せめてもの幸いは……」という発想に転換します。
そうすることで、痛みを和らげることができます。
自分に次のように問いかけてみましょう。
- 「後悔している意思決定が、もっとひどい結果を招いた可能性はないか?」
- 「後悔に関連していることで、一筋の明るい光を見出すとすれば、それは何か?」
後悔から将来への教訓にはなりませんが、現在に対する見方を変えることに役立ちます。
せめてもの幸いは…もっと食べ過ぎなくて良かったこと。
後悔した経験を教訓にする
私たちが後悔に対して取れる最善の行動は、「後悔をきっかけに未来の行動を改善する」ことです。
そのために、次の3つのプロセスを通じて行います。
- 自分が後悔をいだいているという事実を認める
- その経験に対する見方と自分に対する見方を改める
- そこから教訓を引き出して、将来の意思決定を改善する
具体的な方法は、次の3ステップです
ステップ1 セルフ・ディスクロージャー──その経験を言葉で再現し、心の重荷を軽くする
最初に実践すべきステップは、「セルフ・ディスクロージャー」です。
すなわち、自己開示です。
このステップでは、後悔の重荷を軽くするために行います。
あまりに強く後悔を抱え込みすぎれば、精神と肉体に有害な結果を生みかねません。
方法は、自分の後悔を文章にしたり、誰かに打ち明けたりしましょう。
文章にせよ、口頭にせよ、言語化することにより、思考を道筋立てて整理することができます。
そのことにより、漠然としたネガティブな感情を具体的に認識できるようになります。
打ち明けます。
実は私…食べ過ぎたんです。
ステップ2 セルフ・コンパッション──その経験を当たり前のことと位置づけ、影響を無力化する
このステップでは、その後悔にどのように対処するかを選択します。
人は、自分が失敗したとき、自分に厳しい態度を取ることが多いです。
しかし、自分に厳しい姿勢は生産的ではありません。
自己批判の対極にあるのは、自尊心です。
強い自尊心は、パフォーマンスが向上し、抑鬱と不安が緩和されます。
しかし、自尊心をもつことにはマイナス面もあります。
強い自尊心は、ほかの人たちを見下すことになる場合が多いです。
犯罪者は、平均より自尊心が高いと言われています。
自尊心を高めることによる対処の代わりに最も効果を期待できるアプローチは、「セルフ・コンパッション」です。
基本的に、自分にやさしい態度で接することから始めましょう。
これは、自分の失敗や弱点から目を背けるわけではありません。
「人は誰でも完璧ではなく、人生で失敗し、困難にぶつかるものだ」と考えるのです。
ネガティブな感情を抑え込むではなく、その感情を強く意識しすぎるでもない中間のアプローチを実践できます。
後悔と「向き合い続ける」一方で、その経験が自分という人間を特徴づける要素とは考えません。
セルフ・コンパッションを実践することは、自己批判により状況を悪化させることなく、自尊心をいだくことの弊害を避けつつ、その恩恵にだけ浴することができます。
つい食べ過ぎてしまうことなんて、誰でもあることですよね。
それに、食べ過ぎることは私という人間を特徴づける要素ではありません。
ステップ3 セルフ・ディスタンシング──その経験について分析して戦略を立てる
このステップでは、ネガティブな感情を冷静に分析し、将来の行動戦略を立てます。
そのために「セルフ・ディスタンシング」が役立ちます。
セルフ・ディスタンシングを実践することで、後悔と距離を置きます。
その方法は、3つあります。
空間的に距離を置くアプローチ
第三者の視点で自分の後悔を検討します。
私たちは、自分自身の問題より、ほかの人の問題のほうがうまく解決できます。
それは、本人よりもむしろものごとの全体像が見えやすいです。
あなたの親友が、あなたと同じ後悔をいだいている状況を、できるだけ具体的に想像しましょう。
あなたは、どのように親友に助言し、どのような行動を勧めるでしょうか。
自分の問題もほかの人の問題と同じくらいうまく解決できるようになります。
また、自己批判を乗り切り、その経験から学習しやすくなります。
この効果は、後悔を変容し改善の手立てにするうえで欠かすことができない点です。
大丈夫、食べ過ぎても運動すればいいんだよ!
時間的に距離を置くアプローチ
後悔を分析し学習するための戦略を立てる際に、「タイムトラベル」の能力を活用します。
たとえば、「10年先に、そのネガティブな経験をどう感じるか」を想像しましょう。
そのことにより客観的で大局的な視点を得ることで問題を小さく思う事ができます。
この効果によって、ストレスが弱まり、問題解決能力が高まります。
自己正当化をやめて、自己改善につなげられる可能性が高まります。
10年後、今回食べ過ぎたことなんて、どうでもよくなってそう。
言葉で距離を置くアプローチ
自分自身と対話する際、一人称を使うことをやめて、二人称や三人称を使います。
そうすることで、問題と距離を置くことが可能になり、ネガティブな経験を有意義な経験に変えやすくなります。
たとえば、自分のことを「私」ではなく「あなた」と呼んでみましょう。
そのことにより、より強力な行動を取って未来の行動を改善しようという意志が強まります。
”あなた”、食べ過ぎです。
もっと身体に気を遣った方がいいですよ。
このプロセスを行うことで、後悔を安定と達成と目的追求の強力な手立てに変えることができます。
ステップ1:セルフディスクロージャー
▼
ステップ2:セルフ・コンパッション
▼
ステップ3:セルフ・ディスタンシング
後悔を先読みする
後悔は、過去を振り返ることで感じる感情です。
しかし、自分が将来にいだく後悔を予測することにより、その事態を避けるため行動を改めることができます。
未来にいだく後悔を予測することの恩恵
「損失回避の心理」という認知の歪みを利用します。
この効果により、未来にいだく後悔が、歓喜より大きく感じるようになります。
そうすると、行動を決定する前に多く情報を収集し、じっくり検討するようになります。
行動しないことによる後悔を回避することに特に有益です。
未来にいだく後悔を予測することの弊害
将来にいだく感情の強さとその感情の持続期間を予測することが容易ではありません。
自分が将来いだくネガティブな感情を過大評価してしまいます。
一方で、その感情に対処する自分の能力を過小評価してしまいます。
そのため、意思決定の機能不全、過度なリスク回避の姿勢等の副作用を伴い、むしろ悪い結果を招く場合があります。
では、どうすればいいか?
未来にいだく後悔を予測することの恩恵に浴しつつ、その弊害を避ける方策が「後悔最適化のフレームワーク」です。
後悔最適化のフレームワーク
予測に時間と労力を割くのは、主要な4種類の後悔に関することに絞ります。
- 基盤に関わる後悔
- 勇気に関わる後悔
- 道徳に関わる後悔
- つながりに関わる後悔
それ以外の後悔を予測しても、たいてい好ましい結果につながりません。
食べ過ぎの後悔は、「基盤に関わる後悔」なので対象ですね。
未来を予想すると、休み明けにスーツがきつくなってるかも。
食べ過ぎるのは、やめよう。
意思決定の中で自分の幸福感を大きく左右するものと、そうでないものの違いをよく見極めましょう。
本当に後悔することが分かれば本当に大切にしていることが見えてきます。
後悔は、よい人生を生きるための道筋を教えてくれます。
読んだ感想
本書を読んで、後悔に対する知識を学ぶことができました。
後悔という感情は、将来のよい意思決定のために活かすことができるものという内容でした。
しかし、この後悔の力を活用することはすごく難しいというのが感想です。
何故なら、それだけ後悔と向き合ことは精神的に辛いものだからです。
本書を読んでも後悔は人生を歩むうえではやっかいな相手という印象は変わりません。
後悔は、粘着質で、やっかいなやつです。
仲良くなれる気はしません。
できる限り後悔の少ない人生を歩んでいきたいと考えています。
失敗することを恐れて行動しないという意味ではなく、適切な判断をしていきたいです。
それでも後悔することがあれば、本書の内容を実行しようと思います。
これまでどうしていいかわからなかった後悔の感情の扱い方を知ることができたことは、本当に良かったと感じています。
「後悔の感情を和らげる方法を知っている」という事実は、少し後悔に対する耐性がついたような気持ちにしてくれます。
本書に掲載されているある調査によれば、行動しなかったことへの後悔が行動したことへの後悔の二倍近くに上ったそうです。
理由は、行動した場合は結果が明らかになっているので後悔が続く期間が短くて済みます。
行動しなかった場合、結果を想像するしかなく、終わりのない推測を生んでしまうため苦しみが長く続くようです。
「やらぬ後悔よりやる後悔」は、科学的に正しいみたいですね。
この詳細は、本書でご確認ください。
後悔の研究に関するおもしろい調査内容を知ることができるのも本書の魅力だと思います。
予想とは異なる意外な結果が出るなど、人の感情というのは奥が深いもののようです。
後悔がやっかいな感情という印象は変わりません。
しかし、後悔の役割を知れば、この感情の存在理由は認めざるを得ません。
後悔の感情に対する理解を深めて、この強力なパワーを人生に役立ててみてはいかがでしょうか。